https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61683530U2A610C2EA1000/
ホテル宿泊料や公共交通の運賃に上乗せする形で徴収し、観光インフラの充実や維持管理に充てる。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ観光需要の回復に備え、観光政策の安定財源を確保するねらいだ。
長崎市議会で3月、市内のホテル利用者に課す宿泊税を創設する条例が成立した。税額は宿泊料金に応じ、1人1泊あたり100~500円。総務省の同意を得たうえで、2023年4月の徴収開始を目指す。
年間4億4000万円の税収を想定し、名物の夜景を楽しむための環境整備や歴史的建造物の修繕などに充てる。「観光事業者からは『税収を使って再訪意欲が高まる街にしてほしい』との意見が多い」(同市)
海辺のリゾートが人気の沖縄県宮古島市も24年度の宿泊税導入を検討している。観光客によるごみ投棄、サンゴの踏み荒らしの被害対策の財源として活用したい考えだ。
世界遺産の厳島神社がある宮島への「訪問税」の準備を進めるのは地元・広島県廿日市市だ。23年秋ごろに導入予定で、フェリー乗船時に運賃と一緒に1人あたり100円を徴収する。
コロナ禍前の19年は市人口の40倍にあたる年間465万人もの観光客を集めた半面、島内の混雑などオーバーツーリズム(観光公害)の弊害も発生。混雑対策やトイレ整備に市は年間3億円程度負担してきた。市の担当者は新税について「観光客にも応益負担してもらう」と説明する。
「観光税」は米欧の主要観光地で広く普及している。日本ではコロナ禍前の18~20年、京都市や金沢市など6自治体が宿泊税を導入。コロナ禍で新設の動きは一時ストップしたが、経済活動の正常化に向け観光振興策の財源として再び注目を集めている。
観光産業に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員は「課税するなら税収の使途や効果の検証が欠かせない」と話す。税負担に対する観光客の理解が得られるよう、税収を有効活用し観光地の魅力を高める姿勢が自治体に求められる。

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