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大成建設、パパも全員育休 男性8割職場の「壁」壊し術 しごと進化論

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC27APB0X20C22A5000000

 

丸井グループも4年連続100%の記録を更新中だ。育休を取りたいというパパたちは確実に増えているが、その前に3つの高い壁が立ちはだかる。「上司や職場の無理解」「収入の減少」「復帰後のキャリア不安」だ。両社はこの壁をいかに壊したのか。

 

「多数派こそ育児を知らねば」

大成や丸井は社内アンケートなどを通じて取得への「壁」を把握し、一つ一つ突き崩してきた。

大成の現場では、以前から図面や施工過程のデータを随時上司や同僚と共有し「あす急に休むことになっても交代できる」(社員)状況にあった。しかし「上司や職場の無理解」という第1の壁が高かった。

これだけ経験者が増えている大成でも、部下に切り出されて戸惑う管理職はゼロではない。塩入専任部長は「上司こそ業務の先の見通しが本人よりも見えているはずで、調整に不可欠」と話す。

「イクボスの皆さんはぜひ取得しやすい雰囲気をつくってください」。初期の旗振り役、村田誉之前社長は全社に断続的にメッセージを発信。トップが発破をかけ、役員、部長、課長と上から下へ意識変革を迫った。

ダメな部局、一目瞭然

30近い支店や事業所のトップを務める役員クラスと管理職に、取得率を四半期ごとに一斉送信する。全部門の一覧表なので、ダメな部局は社内中に知られてしまう。未取得の社員がいる部局の幹部には人事部が働きかけ、取得期限が近づくほど連絡の頻度を上げてプレッシャーをかける。

その分、上司の権限を大きくした。従来は1カ月前までに人事への申請が必要だったが、上司さえ了承すれば取得直前の申請でもOKとした。「今なら取れる」という機を逃さずにすむ。

第2の壁が「収入の減少」だ。原則満1歳、事情に応じて満2歳までは給与の50~67%に相当する育児休業給付金を雇用保険から受け取れるが、夫婦ともに休めば家計不安は大きい。大成では5日間まで育休を有給扱いにできる制度を、今秋にも大幅に拡充する。男性版産休を使う場合は1カ月分を有給扱いにできる方向で検討している。

第3の壁である「復帰後のキャリア不安」を壊しにかかっているのが丸井グループだ。

「2年以内に昇進したい。でも産後の妻を助けるにはここしかない」。押川剛一郎さんは18年、当時は前例も少なかった半年間の育休を取得した。復帰から1年半後、男性としては半年育休の経験者で初めて管理職へ昇進。今はグループ会社の部長として活躍する。

昇進試験の受験資格は直近1年分の評価をもとに与えられる。育休を挟んだ場合、公平になるよう取得期間を除いて前後計1年分の評価を使う。押川さんの事例を周知し「昇進で不利になるのでは」という不安を払拭。長期取得者を増やした。