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住宅の脱炭素進める第一歩に

断熱された住宅は夏も冬も快適な室温を保ちやすく、エネルギー消費が減り、健康面で利点もある。住宅の脱炭素は欧米に後れを取っており、断熱の義務付けをその第一歩にすべきだ。

日本のエネルギー消費のうち、建築物は3割を占める。しかし、5000万戸ある既存住宅の多くは断熱が不十分で、冷暖房のエネルギーが漏れている状態だ。二重窓や断熱材を使うことで冷暖房の効率を上げ、エネルギー消費を減らす余地は大きい。

住宅の脱炭素には(1)住宅の断熱化(2)省エネ家電の推進(3)再生可能エネルギーの活用――の3つの手段がある。今回の法改正は2025年度からすべての新築住宅に国の基準に適合した断熱性能を求める。遅れていた住宅の断熱が底上げされることを期待したい。

ただ義務化する国の断熱性能は1999年に定めた古い基準だ。欧米ではこれよりエネルギー消費が3割ほど少ない断熱性能が主流になっている。日本もさらに高いレベルに引き上げるべきだ。

住宅の断熱は、急激な室温変化によるヒートショックなど、高齢者の健康被害を抑える効果が期待される。公営住宅などの断熱化は電気代の縮減を通じて低所得者支援になる。政府や自治体は健康や福祉の観点も踏まえ、総合的に住宅の断熱化を進めたい。

断熱住宅の普及が遅れているのは、初期投資や改修費がかさむためだ。だが最近は住宅選びで長期的なエネルギー効率を考えて断熱性能を重視する若い世代が増えている。こうした購入層がきちんと見極められるよう断熱性能の表示を充実させることも重要だ。

住宅の脱炭素には再生可能エネルギーの活用も欠かせない。住宅用として現実的なのは太陽光発電だが、脱炭素に必要な水準にはほど遠い。設置のための負担増や廃棄パネルの問題から逃げず、着実に増やしていく道筋を考えていかなければならない。