https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61648550R10C22A6CM0000/
マルチ商法のように連鎖的に若者を集め、SNS(交流サイト)を通じて申請方法を指南するなどの手口も判明。警察庁によると、これまでに摘発された7割近くを20代以下が占める。不正の認識なく加担するケースも少なくないとみられる。
「給付金をもらってビットコインに投資すれば倍にできる」。東京国税局職員ら7人が逮捕された詐欺事件。グループで「勧誘役」だった都内の大学生(22)=詐欺罪で起訴=は、こんなうたい文句で友人の大学生や後輩の高校生らを誘っていた。
グループはSNSも活用しながら名義人を集め、グループチャットを通じて「指南役」が持続化給付金の申請方法を細かく指示していた。申請に必要な架空の確定申告書は、「作成役」に当たる国税局職員の男(24)=同容疑で逮捕=が作成していた。
名義人は指南役の指示に従って架空の確定申告書を提出。その後にグループのメンバーが「申請役」となり、架空の売り上げ台帳で売り上げが減ったように見せかけて給付金を不正に得ていたとみられる。
捜査関係者によると、2021年に逮捕された男らも含めて10人のグループが細かく役割を分担していた。この組織をつくったのがリーダー格の30代の男だ。不正受給で得た資金の8割を暗号資産(仮想通貨)の投資に充てていたとされる。海外に出国したとみられ、警視庁が行方を追っている。
グループの1人は「200人以上に不正受給させた」と供述。少なくとも2億円の給付金を詐取していたとみられる。警視庁は名義人の大学生ら7人も書類送検し、一連の事件で計16人を摘発した。
なぜ多くの若者が引き込まれるのか。若者らは仮想通貨投資を名目に「他の人を紹介すれば報酬が得られる」などと誘われていた。勧誘にはSNSが使われ、誘われ加わった名義人が勧誘役となるケースもあった。マルチ商法のように連鎖的に集まり、不正に加担していった。
不正受給された給付金はグループに送金され、結果的に名義人には一円も入っていなかったが、捜査関係者は「報酬目当てで加わっていた」とみる。若者らは「違法ではない」という勧誘役や指南役の言葉を信じていたとみられ「違法性の認識も低かった」という。
組織化されたグループが名義人を大規模に集め、不正受給を繰り返して被害が巨額に膨らむ構図は他の事件でも判明している。
5月末に三重県の女ら親子3人が詐欺容疑で警視庁に逮捕された事件では、指名手配され、出国先のインドネシアで7日に逮捕された女の元夫(47)が主導する十数人規模のグループが暗躍していた。勧誘役に知人らも巻き込みながら全国のファミリーレストランなどでセミナーを開き、名義人を募っていた。
首都圏を中心に会社員や飲食店従業員らを幅広く集め、20年5~9月で法人・個人合わせて計約1780件を申請。9億6千万円以上を詐取したとみられている。

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