https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61650650R10C22A6EA3000/
原稿は木原誠二官房副長官が書いた。2021年秋の政権発足前から長く岸田氏の政策や演説をつくってきた最側近だ。木原氏は事前に野村証券やJPモルガン証券、みずほ証券で講演し、金融所得課税の強化について質問を受け「考えていません」と答えていた。
金融所得課税は20年の岸田氏の著書の第1章冒頭、21年秋の自民党総裁選公約のそれぞれに記載している。格差是正に力点を置く岸田氏の「一丁目一番地」とみられていた。
投資家や市場は嫌がる政策だった。政権発足後は日経平均が下がり「岸田ショック」と呼ばれた。ウクライナ侵攻や物価高も重なり、その後も相場は力強さを欠く。夏は参院選だ。その前に市場の不安を解消したい。切迫感がシティー講演につながった。
「特定の考え方を正解と押しつけるのは良くない。新しい資本主義がいいな」。こう話したのは岸田氏自身だ。多様な概念を包摂するために「新しい」と冠をつけた判断が後々まで響く。
20年の総裁選はベテランも含む派閥全体で「分断から協調へ」を掲げて戦った。政策がみえにくい言葉は菅義偉氏が訴えた「アベノミクスの継承」に敗れた。
「新しい資本主義」は当初「市場の機能や競争が過剰なことの弊害」を強調する側面が目立った。経済界などからは「規制緩和や競争が十分でない弊害が大きい」と真逆の見方がでている。
首相はひとまず軌道修正した。それでも「分配偏重になるのでは」「本当に雇用改革をするのか」と疑念は残る。市場や経済界は注視し続けている。

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