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分断映す「新FAANG」 エネ・農業・資源…株価17%高、「元祖」に逆行

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61652200S2A610C2MM8000/

世界の株式市場でマネーの流れが急変している。巨大テックから流出し、エネルギーや農業関連など、これまで低迷していた分野に向かいだした。勝ち組の変化は、世界がグローバル化から「分断」に転じたことを映している。

ロシアがウクライナに侵攻した直後の2月下旬。米銀大手バンク・オブ・アメリカの富裕層部門のジョゼフ・クィンラン氏、ローレン・サンフィリッポ氏らは「新たな世界を映すもの」として顧客に投資アイデアを提案した。

市場を席巻してきた米アップルなど米IT(情報技術)大手5社は、その頭文字をとって「FAANG」(総合2面きょうのことば)と呼ばれてきた。バンカメが新たに命名した「FAANG2.0」は、燃料(Fuels)、航空・防衛(Aerospace and defense)、農業(Agriculture)、原子力と再生可能エネルギー(Nuclear and renewables)、金・金属・鉱物(Gold, metals, minerals)の5分野だ。

5分野の主要上場投資信託(ETF)を新FAANGの値動きと見立てて価格を平均すると、ウクライナ侵攻後の上昇率は市場平均を17%上回る。12%安のIT大手の旧FAANGに比べ好調さが目立つ。加入者が減少に転じたネットフリックスは株価が同期間に半値になった。

5分野では企業収益の上振れ期待も高まってきた。QUICK・ファクトセットによるアナリスト予想の集計では、総合石油、航空・防衛、農産物・製粉、貴金属の4業種は24年にかけて、1株利益が拡大する見通しだ。ファクトセットの業種分類のない原子力でも、関連のETF採用銘柄の1株利益予想は増益が続く。

分断の世界では、生産国が偏る化石燃料や農作物は世界に行き渡りにくくなり、価格は高くなってしまう。企業は収益面で最適な供給網を築くだけでなく安全保障を意識しなければならない。新たに生まれる追加コストを収益源とする新FAANG企業の株高は、決して世界経済にプラスではない。