https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM02BQ80S2A600C2000000
中国の調査会社によると、2021年に中国では20年比3割増だったが、米国は2倍だった。中国ではスタートアップへの投資が米国ほど伸びなかったためと説明されるが、教育や不動産などの業界で多くの企業が政府による規制を受けた影響も背景にあるとみられる。
中国のユニコーンを業種別に見ると、政府による規制の影響が出ている様子がうかがえる。胡潤研究院のユニコーンリストでは、オンライン教育などの「教育科学技術」分野での中国の社数は20年版で10社あったが、21年版ではゼロになったのだ。
中国の教育関連で最大のユニコーンとされたネット学習塾の猿輔導(北京猿力教育科技)や、VIPKID(北京大米科技)、小船出海教育科技といった有力企業が軒並みリストから外れた。中国政府が21年7月に打ち出した教育規制により、小中学生を教える学習塾では一部の授業が禁じられ、「非営利団体」への転換も義務付けられた。多くの企業が事業の転換や縮小を迫られたことが影響したとみられる。
教育関連以外でも、「不動産科学技術」分野の中国のユニコーンは19年版で7社あったが20年版と21年版ではいずれもゼロだった。オンラインで不動産の売買を仲介するサービスを手掛ける成長有望な企業が多かったが、物件の売買や融資に関わる規制の強化で不動産市況が停滞したことが響いたようだ。
胡潤研究院は「米国は投資が得意だが、中国はインキュベーションが得意だ」と説明しつつ、「美酒を造るには時間がかかる」という言い方で長期的な観点で取り組むことが必要だと主張する。ユニコーンの企業価値で世界1、2位を占めるのは、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の運営母体バイトダンスとアリババ集団傘下の金融会社アント・グループの中国2社であることも強調する。
ただ、アントはまさに政府による締め付けの対象となった企業の代表格で、ネット関連への規制はなお続くと見られる。不動産や教育などと特定の業界への統制が突然強まるリスクが残っており、スタートアップへの投資に対する警戒が残る。今後もユニコーンの社数で米中の格差が開き続ける可能性がある。(広州=川上尚志)

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