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日本株に脱デフレ期待 「値上げ恐怖症」克服近いか

 

 

この点を指摘した日銀の黒田東彦総裁の発言に世論の反発が強まったが、投資家はどこ吹く風だ。賃上げとセットで企業が「値上げ恐怖症」を克服できれば、デフレに苦しんできた日本株の先行きにも明かりが差す。

 

「家計の値上げ許容度が高まっている」と説明した6日の黒田総裁の発言は国民感情を逆なでした。

だが、投資家は異なる視点から一連の「黒田騒動」を観察していた。

「クロダがここまでたたかれる理由が、よく分からない」。日本株の投資経験が長い米運用会社の幹部は首をかしげる。「日本企業の最大の弱点だった値上げできない体質がようやく変わろうとしているのに、日本人は株価を下げたいのか」

投資家が値上げを歓迎するのは、日本企業の収益性の低さの根っこには長年のデフレで定着した「値上げ恐怖症」があると疑っているからだ。

「物価は上がらないという長年のノルム(社会的規範)が変わる好機だと海外投資家たちはみている」。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅氏は指摘する。

それでも消費者がついてこなければ、企業は値上げしたくてもできない。だが今回は値上げに対する消費者の耐性が高まっている可能性がある。

「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは5月14日からギョーザやチャーハンなどを20~30円値上げしたが、5月の全店売上高は前年同月比20.3%増と過去最高を更新。既存店売上高も17.6%増だった。値上げで客数が減るどころか、大きく増えた。

「賃上げを妨げてきたパートタイムや非正規雇用が頭打ちになってきており、賃金上昇圧力が高まる環境が整ってきた」。野村証券の池田雄之輔氏はいう。賃上げを伴う値上げは「良いインフレ」。日本株の本格復活に欠かせない条件だ。