【第1章 我が国を取り巻く環境変化と日本経済】
▽新型コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵略、権威主義的国家による民主主義と自由主義への挑戦、気候変動など我が国を取り巻く環境に構造変化が生じている。
▽国内では資源価格高騰による海外への所得流出、コロナ禍でさらに進む人口減や少子高齢化など難局が同時に、複合的に押し寄せている。
▽課題解決と経済成長を同時に実現し、経済社会の構造を変化に対して、より強靱(きょうじん)で持続可能なものに変革する「新しい資本主義」を起動する。「成長と分配の好循環」を早期に実現する。
▽日銀においては2%の物価安定目標を持続的、安定的に実現することを期待する。
▽他のG7諸国並みの円滑な入国を可能とする水際措置の見直しなど水際対策緩和を進める。
【第2章 新しい資本主義に向けた改革】
▽「人への投資」を抜本的に強化するため2024年度までの3年間に4000億円規模の予算を投入。デジタルなど成長分野へ移動できるよう強力に支援する。
▽今年中に非財務情報の開示ルールを策定するとともに、四半期開示の見直しを行う。
▽給付型奨学金と授業料減免を必要性の高い多子世帯や理工農系学生などの中間層へ拡大する。
▽現在35%にとどまる自然科学(理系)分野の学問を専攻する学生の割合は5割程度を目指すなど具体的な目標を設定する。
▽最低賃金は地域間格差にも配慮し、できる限り早期に全国加重平均で1000円以上を目指す。
▽少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)制度の改革など貯蓄から投資へのシフトを大胆に進める。年末に「資産所得倍増プラン」を策定する。
▽量子、人工知能(AI)、バイオ、遺伝子治療など国益に直結する科学技術分野で国家戦略を明示する。首相官邸に科学技術顧問を置く。
▽スタートアップの資金調達の困難さを解消するため、新規株式公開(IPO)プロセスの見直しを進める。個人保証や不動産担保に依存しない融資への見直しなど成長資金の調達環境を整備する。
▽50年のカーボンニュートラル実現へ、今後10年間に150兆円超の官民の投資を先導するため、十分な規模の政府資金をGX経済移行債(仮称)で調達することを検討する。
▽民間で公的役割を担う新たな法人形態の必要性の有無について検討する。
▽不妊症・不育症支援や妊産婦支援・産後ケアの推進に取り組む。出産育児一時金の増額をはじめとして経済的負担の軽減の議論を進める。
▽男女間の賃金格差の解消に向けて大企業に男女間の賃金格差の開示を義務付ける。
▽東京一極集中の是正や社会機能を分散した国土へ、デジタル田園都市国家構想の実現による地方の活性化を強力に進める。
▽デジタル推進人材を26年度末までに230万人育成する。
▽感染症後に向けた事業再構築を容易にするため、債務がその足かせにならないよう新たな事業再構築法制の整備を進める。
【第3章 内外の環境変化への対応】
▽新たな国家安全保障戦略などの検討を加速し、防衛力を5年以内に抜本的に強化する。
▽スタンド・オフ防衛能力、無人化装備、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む領域横断能力を強化し、AI、無人機、量子などの先端技術の研究開発を進める。
▽年末に改定する「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」を踏まえ策定される新たな「中期防衛力整備計画」の初年度にあたる23年度予算は、同計画での議論を経て結論を得る必要がある。予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。
▽半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品などの重要物資について支援措置を整備し、安定供給を確保する。内閣府に経済安全保障推進室(仮称)を設置する。
▽エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保を前提に脱炭素の取り組みを加速させるため、徹底した省エネルギーを進めるとともに、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。
▽資源のロシア依存度低減や供給途絶対策のためロシア以外の調達先の多角化や、主要消費国と連携した生産国への増産働きかけ、使用量低減対策を行う。
▽インド太平洋経済枠組み(IPEF)はパートナー国と連携して地域の繁栄と経済秩序の構築に取り組む。米国には環太平洋経済連携協定(TPP)復帰を働きかける。
▽対日直接投資残高を30年に80兆円とする目標達成に向け、投資先としての魅力を高める。
▽国土強靱化基本計画に基づき必要・十分な予算を確保する。
【第4章 中長期の経済財政運営】
▽財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む。経済あっての財政で現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない。
▽感染症、物価高の影響、内外の経済情勢に注視する必要がある。状況に応じて必要な検証を行う。
▽コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う。
▽24年度中をメドに保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況などを踏まえ、保険証の原則廃止を目指す。
▽生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討など歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。
【第5章 当面の経済財政運営と23年度予算編成に向けた考え方】
▽景気の下振れリスクに対応し、民需中心の景気回復を着実に実現すべく、賃上げや価格転嫁など「成長と分配の好循環」に向けた動きを確かなものとしていく。
▽23年度予算で本方針や骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。
▽コロナ禍での補正予算の使い道や成果を見える化する。
コメントをお書きください