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米欧、企業・雇用支援に区切り コロナ後見据え廃止・縮小 日本は長期化、弊害懸念

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61456460W2A600C2NN1000/

 

欧州連合(EU)の欧州委員会は加盟国の企業への臨時補助措置を6月末で終える。雇用維持策は英国などが終了し、米国も中小企業向けの人件費融資を終えた。日本は補助が長期化している。やめ時を逸して過剰な延命策となれば、産業の新陳代謝や労働移動を停滞させる副作用が大きくなる。

 

日本は企業支援も雇用維持策も継続中だ。中小企業に最大250万円を支給する事業復活支援金の申込期限は従前の5月末から6月17日まで延長した。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)は物価高対策に看板を替えて9月末まで延長した。

 

岸田文雄首相は5月31日、金額引き上げの特例措置が6月末で期限を迎える雇用調整助成金について「延長する方向で調整する」と明言した。「原油高、物価高騰などがコロナ禍からの経済回復に及ぼす影響を見極める必要がある」と語った。9月まで延長する方針だ。

 

企業への過度な支援は新陳代謝を遅らせ、成長を阻害する。本来、市場から退場すべき企業を延命しゾンビ化させる恐れがある。雇用保護が行き過ぎれば社内失業が慢性化し、企業が抱える過剰な労働力が膨れ上がる。成長分野への労働移動が進まなくなる。

日本では既に副作用の兆しがある。

企業に雇われたまま仕事を休んだりする「休業者」は21年に206万人となり、19年より30万人も多かった。企業にとどまる人が増えて求人が鈍いとの指摘がある。厚生労働省は「コロナ禍で労働移動の鈍化がみられる」と分析する。就業者に占める転職者の割合(転職者比率)は21年、02年以降で最低となった。