https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61398460T00C22A6KE8000/
図の上部は15~24歳と全年齢平均の完全失業率を比較したものだ。15~24歳の失業率がときに全年齢平均の2倍に達することがわかる。引退前後の世代(55~64歳や65歳以上)でも、若年層に比べれば失業率は低い。若年層での失業率の高さは男女ともに際立っている。
そもそも失業率が高いときにジョブマッチングの質が悪いとは限らない。例えば不況期に、求職者が努力水準を高めて慎重に仕事を選び、雇用者が熱心に人を選べば、マッチングは良い可能性もある。ただし近年は不況期に若年層でのジョブマッチングの質が低下するという報告もある。現在の日本でも、若年層でのジョブマッチングの質は悪化しているかもしれない。
若年失業の問題は短期的なものにとどまらない。学卒時すなわち初職の就職を迎える時期に非就業だったことは、生涯の就業状況を悪化させ、所得など経済厚生を低下させることが多くの研究でわかっている。そして非就業者の増加は社会保障費の増大につながるという意味で、個人の問題ではなく社会全体の問題といえる。不景気という個人の責任ではない外的ショックによる若者の厚生ロスは、教育を受けている世代つまり次の労働力世代の学ぶ意欲もそぐ可能性がある。
こうした者の数を少なくするには、学齢期すなわち学校で、働く意識を高める学びや職探し方法の習得が必要だろう。勉強を続けていれば自然に仕事を探す技術が身につくわけでも、働く意欲が高まるわけでもない。自らの手で仕事を選択することの重要性や選択方法が教えられるべきだ。
前述したマッチング機能の向上や就業・求職訓練が学校でも必要かもしれない。これは中高生にもあてはまる。具体的にどのような学びが効果を持つかは統計的根拠を得なければ論じられないが、学びを促す政策を考える際には、教育と労働の現場をバラバラにとらえてはならないだろう。
学校生活を最後まで送らせて学業成果の向上を目指す教育政策や、就労生活の開始から労働を継続させて生産性の向上を目指す労働政策を、別々に考えるのでは不十分だ。学校から仕事へのスムーズな橋渡しを目指すことが重要である。
○若年失業は生涯影響し社会全体の問題に
○マッチング機能向上、情報提供・開示が鍵
○学校から仕事へのスムーズな橋渡し重要
こはら・みき 大阪大博士(経済学)。専門は応用計量経済学、労働経済学、家計行動の実証分析

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