https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61446520U2A600C2EA4000/
旅行会社6社が合計15のツアーを企画し、米国やオーストラリアなど4カ国からの約50人を千葉県や長野県など12県で受け入れた。ツアーはそれぞれ4人までで、添乗員が同行して毎日の検温などの感染防止策を実施した。
10日からは、ウイルスの流入リスクが比較的低い米国や中国など98の国・地域から添乗員同行の団体ツアーに限定して受け入れる。すでに1日から入国者全体の上限を2倍に引き上げているが、1日あたり2万人にとどまっている。主要7カ国(G7)で日本以外に上限を設ける国はなく、日本の慎重姿勢は突出している。
旅行・運輸業界では感染防止の重要性を理解しつつ、上限の引き上げを求める声が上がっている。JTBの山北栄二郎社長は「2万人では回復は限定的だ」と話す。
全日本空輸(ANA)の井上慎一社長は「足元の円安環境も重なり、訪日需要はますます高まっている。スピード感をもってG7各国並みの緩和や撤廃が進むことを切望する」と訴えている。
日本政府観光局(JNTO)などの統計によると19年の訪日客数は3188万人に達した。消費総額は4兆8135億円に上り、少子高齢化などによる国内消費の低迷に苦しむ消費・サービス産業を潤した。新型コロナで大きな打撃を受けた企業の間で、訪日消費の復活への期待は高まる一方だ。
JTBでは「海外からの問い合わせは日を追って増えている。団体ツアーの引き合いは欧米や豪州からが特に多く、受け入れ側として海外の旅行会社に提案していく」(山北社長)という。
大手ホテルのオークラ東京(東京・港)では訪日客の増加を見据え、週末だけだった朝食のビュッフェを5月中旬から平日も再開した。早朝や深夜に到着した訪日客のためにルームサービスを24時間対応に戻す検討に着手した。海外向けの広告も始める予定だ。
ヨドバシカメラはデジタルカメラなど外国人に人気の高い商品の確保を進めてきた。訪日客向けの接客や会計のオペレーションの再確認にも取り組む。そごう・西武は西武池袋本店(東京・豊島)などで減らした免税カウンターの人員の再拡大に動いている。
訪日需要については、急回復することはないという慎重な見方も多い。百貨店大手の幹部は「中国の都市封鎖(ロックダウン)は解除されたが、現地では海外に行くと戻れなくなるという心配もあると聞く」と話す。社内では「秋の中国共産党大会後、政策が変わるタイミングで訪日客が増える」と想定しているという。
ようやく始まる訪日客復活への道のり。入国者の上限の緩和や撤廃、個人客の受け入れ再開がどのようなペースで進むかに企業は視線を注ぎ続けている。

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