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高齢者、きしむ「終の棲家」 修繕費2割上昇し負担重く

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD153HP0V10C22A5000000

 

長寿化によって修繕回数が増え、工事単価も10年で2割上昇する二重苦の様相だ。賃貸住宅でもオーナーの約7割が高齢者の入居に拒否感を抱く。公的な支援で対応しきれない部分が多く、民間の取り組みを効率的に生かしていく工夫が欠かせない。

 

消費者物価指数(20年=100、全国)で住居の外壁塗装や水道工事など「工事その他のサービス」をみると、21年までの約10年でおよそ2割上がった。

 

積立金が大幅に上がった現在の水準も国土交通省がマンション修繕の積立金の目安として示すガイドラインの平均値(小規模物件、1平方メートル当たり月335円)に及ばず、さらなる増額が必要な例も多いとみられる。

賃貸住宅の家賃は大幅な上昇こそ少ないが、高齢者には別の問題がある。国交省の20年度調査では賃貸住宅のオーナーの約7割が高齢者の入居に拒否感を示す。入居中の孤独死で、その後の賃貸が難しくなったり、認知症を患ってほかの入居者とトラブルになったりすることを警戒する。

戸建ての修繕費用、築後30年で900万円超

住宅の老朽化に伴い必然的に生じるコスト。さくら事務所(東京・渋谷)の試算では標準的な戸建て住宅(木造2階建て、延べ床面積116平方メートル)では築後30年の修繕費用は基本的な項目だけで900万円を超す。築15年程度の周期で屋根・外壁の補修・塗装など1回数十万円から100万円程度と負担の重い工事が複数、発生する影響が大きい。また、高齢者の持ち家は「耐震や断熱の性能が不十分な物件も相当数あるとみられている」(京都大学の三浦研教授)ため、そうした問題にも対応すると、総費用がさらに膨らむことも考えられる。

マンションは通常、修繕に備えて資金を積み立てるが、やはり築30~40年程度になると給排水管更新など大工事で出費は増える。国土交通省の2018年度調査によれば3割以上のマンションが計画に対して積立金が不足しているという。「老朽マンションは一般的に所有者も年金生活などに移行し、修繕積立金増額などが難しくなる」(東京カンテイ)ことも資金不足の背景にある。建築業界の慢性的な人手不足に加え、最近は資材の値上がりも目立ち、修繕費にはなお先高観が強い。