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地域創生 長崎から全国に 「スタジアムシティ」来月着工 ジャパネットHD 人口増へ広域集客カギ

長崎駅から徒歩約10分の場所に、スタジアム(サッカー場)を核として商業施設やオフィス、ホテルなどが集積する新しい「街」ができる。プロジェクトを担う通販大手のジャパネットホールディングス(HD、長崎県佐世保市)はこの街をテコに人口減に歯止めをかけ、地域の活性化を目指す。

スタジアムシティはJR長崎線と浦上川に挟まれた、三菱重工業の工場跡地を再開発する。広さは約7ヘクタールあり、投資額は約700億円を予定する。中核施設のサッカー場は約2万人を収容し、ジャパネットHD傘下のJリーグのV・ファーレン長崎がホームとして使う予定だ。

サッカー場を囲むようにホテルや商業施設、オフィスビルを配置し、さらには約6000人を収容するアリーナも建設する。同じく傘下のバスケットボールBリーグの長崎ヴェルカが本拠地にするほか、コンサートやイベントも開催できる。

14階建てで約240室設けるホテルは、ジャパネットが自社で運営する。客室のほか、プールやサウナ、ジムからサッカーの試合を眺めることができる。上層階からは同様に試合の様子が見られる11階建てのオフィスビルは主に賃貸用とし、2フロアはシェアオフィスにする。賃貸面積は約1万7000平方メートルと、長崎県内では最大規模になる予定だ。

商業施設は総面積が約2万平方メートルある。5割が物販で、2割は飲食、残る3割がサービス関連となる。

プロスポーツチームの運営など事業の幅を広げているジャパネットだが、本業の通販事業とはかけ離れた大規模不動産開発に乗り出したのには、地元長崎を再生したいとの思いがある。長崎市の21年の日本人の転出超過が全国の市町村で2番目に多いなど、同県は人口減が顕著だ。高田旭人社長兼CEO(最高経営責任者)は「(スタジアムシティ計画の)先にある地域創生により、5年後、10年後、長崎の人口を増やしたい」と口にする。

スタジアムシティは年間約850万人の利用を見込む。内訳はスタジアムに40万人、アリーナは60万人、ホテルが18万人、オフィスは30万人で、商業施設には700万人を呼び込むとする。長崎市の年間観光客数が692万人(19年)、県内最大のテーマパークであるハウステンボス(佐世保市)は最大で同約380万人だったことに比べ、大幅に上回る。

実現には地元客だけでなく、今年9月23日に開業する西九州新幹線などを使って広域からの集客が不可欠になる。成功すれば交流人口が増えるほか、オフィスに企業を呼び込めば定住人口の増加も期待できる。

年間売上高が約2500億円あるとはいえ、ジャパネットにとって今回の事業の負担は小さくない。そこで考えているのが、施設の「重ね使い」だ。

例えばサッカー場では毎日、試合があるわけではない。試合のない日には観客席やコンコースなどをオフィスで働く人に開放し、ミーティングを開いてもらったりジョギング・ウオーキングに使ってもらったりして有効活用する。

ジャパネット傘下でスタジアムシティを企画運営する、リージョナルクリエーション長崎(長崎市)の折目裕執行役員は「生産性を高めることが重要。効率的な運営と高品質のサービスを両立させる」と話す。

高田氏は「長崎で地域創生の成功モデルを確立する。それを各地に横展開することで、日本全体の発展に貢献したい」と強調する。施設の建設と並行し、新しい街を生かすソフトにどれだけ磨きをかけられるかが成功のカギになる。