https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61385060S2A600C2FFJ000/
直近の決算では最終赤字が約3千億円に膨らみ、時価総額はピーク時の3分の1以下に落ち込んだままだ。創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が一線を退くと宣言して4年弱。買収をテコにした拡大戦略の修正や幹部刷新で本業回帰を急ぐが、先行きには険しい道が待つ。
「現場の幹部が次々に交代している」。アリババ関係者は足元で進む組織改編のスピードの速さに驚く。
時価総額7割減
今春には「アリババが全社員の3割にあたる8万人の人員削減を計画している」との記事がネットに流れた。中国メディアによると、アリババ側は「誇張した記事だ」と反論したが、リストラそのものは否定しなかった。「大規模な組織再編に着手しなければならないほど、今のアリババは追い詰められている」(別の関係者)
アリババの苦境は数字上でも明らかだ。5月末に発表した2022年3月期の売上高は8530億元(約16兆6千億円)。前年同期と比べた伸び率は14年の上場以来、過去最低に沈み、純利益も同59%減った。22年1~3月期では最終損益が162億元(約3千億円)の赤字と、前年同期の3倍に拡大。時価総額もピークだった20年10月の8千億ドル超(約100兆円)から、直近は2500億ドル程度に落ち込んでいる。
中国のネット通販のシェアでピーク時に5割超、スマホ決済でも市場の半分近くを握り、関連事業を次々と買収して自らの「経済圏」を広げてきたアリババ。逆回転のきっかけは、政府によるネット統制だった。
20年10月、既にトップを退任していた馬氏は「良いイノベーションは(当局の)監督を恐れない」などと、政府批判と受けとれる発言を口にした。馬氏の関係者は「事前に用意された原稿に批判の文言は入っていなかった。馬氏の発言は意図的だった」と明かす。
この発言を習近平(シー・ジンピン)指導部が問題視したとみられ、その直後に馬氏やアリババを標的とした「粛正」が始まった。20年11月には傘下の金融会社、アント・グループの上場が当局の圧力で延期に追い込まれる。翌21年4月には独占禁止法違反で過去最大となる約3千億円の制裁金がアリババに科された。
中国政府は今年4月末にネット大手に対する統制を緩める方針を公表した。それでも、アリババの関係者は「政府に目をつけられた企業であることは変わりない。今後も厳しい監督は続く」と漏らす。


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