https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC262WB0W2A520C2000000
常盤橋タワー、「社食」がキラーコンテンツ
常盤橋タワーでは、2つのフロアをビルのテナント向けの共用空間として整備した。3階の飲食エリア「My Shokudo」と8階のオフィスサポートエリアだ。特にMy Shokudoは常盤橋タワーの目玉となっている。
My Shokudoは、Dining、Sakaba、Cafe、Hall&Kitchenの4つのゾーンに分かれている。面積は約1490平方メートルで座席数は約500。ビルの就業者は日中、社員食堂として利用できる。現在は1日1000食程度を提供しているという。
三菱地所TOKYO TORCH事業部企画ユニットの谷沢直紀ユニットリーダーはMy Shokudoを導入した狙いをこう話す。「設備や運用にかかるコストの点から、自前で社員食堂を用意できる企業は限られる。オーナー側で用意すれば、テナント企業を呼び込むキラーコンテンツになると考えた」
Hall&Kitchenは終日、DiningとSakabaは午後5時半以降、一般向けに開放するなどして事業性を高める工夫を凝らしているものの、3階の飲食エリアだけで考えれば、従来のように飲食店舗に入居してもらうほうがオーナーの収益性は上がるという。
しかし、「オフィス全体としてどう評価するかは別」と谷沢ユニットリーダーは言う。結果として常盤橋タワーは7万5300平方メートルの膨大な貸し床面積に対して、入居率はほぼ100%。計算上、My Shokudoの導入で貸し床面積は約2%減っているが、その2%で生んだ付加価値によって、ほぼ満室の状態を実現していると考えれば、十分に元が取れているといえる。My Shokudoは27年度に竣工する予定の高さ約390メートルの超高層ビルTORCH TOWER(トーチタワー)にも導入する予定だ。
次は22年8月に竣工予定の東京ミッドタウン八重洲だ。
ロボットが「働く」東京ミッドタウン八重洲
三井不動産は東京ミッドタウン八重洲に「mot. 三井のオフィスfor Tomorrow」を導入する。mot.はフィットネスや会議室、ラウンジなどから成るテナント企業向け会員制施設・サービスだ。
mot.が提供するサービスの組み合わせはオフィスの立地や性格によって変わる。例えば、Otemachi Oneでは周辺に飲食店が少ないことやランチの価格が割高であることからテナント企業向け食堂兼コワーキングスペース「mot. Dining」を設置。日本橋髙島屋三井ビルディングではテナント企業の社員の女性比率が高い見込みだったことを踏まえて、ネイルサービスや搾乳室をmot.に盛り込んだ。
東京ミッドタウン八重洲ではmot.のほか、オフィスロボットの活用も目を引く。
フードデリバリーの配達員が、オフィスビル1階に待機していたロボットに弁当を積み込む。ロボットは自動でエレベーターに乗り込んで高層階に移動し、自動ドアを開けてオフィスに入り、注文した客に弁当を届けた──。
これは三井不動産が22年4月に公開した「デリバリーロボット」実演の様子だ。東京ミッドタウン八重洲では、デリバリーロボット6台、清掃ロボット8台、運搬ロボット5台の合計19台を採用する。オフィスへのロボットの導入数は日本で最多となる見込みだ。
通常のビルでは、ICカードなどの物理的な認証がなければ扉を開けることができない。東京ミッドタウン八重洲は「完全タッチレス化」を実現。ほぼ全てのフロアで自動ドアを採用し、ロボットが自動で開閉できるようにシステムを構築した。エレベーターも連携し、客がいるフロアまで自動で昇降できる。
利用者は専用アプリでロボットを予約し、フードデリバリー事業者にロボットの情報を伝達する。配送サービス開始時には、ビル内の飲食店のデリバリーにも対応するという。三井不動産ビルディング事業三部の山口周平主事は「タッチレスやロボットなどの最先端技術がオフィスの付加価値になる。引き合いも非常に強い」と自信をのぞかせる。

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