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個人、円安でドル売り加速 外貨預金、ピーク時より1兆円減 利益確定で引き出し急増

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61275810Q2A530C2EE9000/

 

日銀によると、個人の外貨預金残高は3月末時点で6.1兆円とピーク時から1兆円近く減少した。外貨建て保険も解約が広がる。目先の円安の下限を120円台半ばとみて利益確定に動く個人が増えた。円の先安観が強まれば、外貨建ての資産運用が増える可能性がある。

 

日本で預金の実質ゼロ金利が続くなか、外貨預金は為替差益と利息が見込める運用手段として個人マネーが流入してきた。2016年1月に4.7兆円だった残高は21年1月に7兆918億円に達した。1年物の定期預金で1.5~2%の金利が付いていた米ドルやオーストラリアドル、ニュージーランドドルの人気が高く、この3通貨で外貨預金の8割を占める国内銀行もある。

 

日銀は外貨預金の残高を円建てで集計しているため、外貨の残高が変わらなければ、円安によって評価額は押し上げられる。にもかかわらず、残高が減っているのは評価額の押し上げを上回るペースで外貨預金が引き出されていることを意味する。円安の下限を1ドル=125円近辺と見た個人が利益の確定に動いたとみられる。

 

投資信託は海外志向を強める。みずほ銀行の試算によると、外貨建て投信の純資産残高は4月末に40.6兆円と、コロナ前から10兆円以上増えた。外国株で運用する投信の3月末の純資産残高も19.7兆円と、日本と海外の株で運用する国内外株投信を5年ぶりに上回るなど、海外の成長を期待した個人マネーが流入している。

今回の円安は金融資産を円建ての現預金に集中させるリスクをあぶり出した。足元では外貨を円に戻す動きが優勢だが、「悪い円安」への意識が再び高まれば、企業の対外直接投資と同様に家計の金融資産でもキャピタルフライト(資本逃避)が起こりうる。日本の家計は金融資産2000兆円のうち半分強が現預金だ。1%でも動けば、大きな円安圧力になる。日銀は市場にも配慮しながら金融緩和の出口を探ることになる。