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みずほリセット100日(1) 発足20年、最後の懸け

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61277250R30C22A5EA1000/

 

5月、東京・大手町のみずほフィナンシャルグループ本社の社長室。社長の木原正裕は少し疲れた表情をにじませ、テレビ会議で全国の有志社員と向き合っていた。

「何を目指しているのかわからない」「変化や摩擦に消極的」「『最近やっていることがおかしい』とお客様に言われた」。木原はうなずいたり顔をしかめたりしながら、社員からの率直な声をかみしめていた。「変えたい。経営陣は本気の本気です」。身を乗り出し画面いっぱいに映った木原は語りかけた。

 

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2021年にシステム障害が相次ぎ、異例の行政処分を受けたみずほ。閉鎖的な企業風土を変え、再興を目指すためのワーキンググループが立ち上がった。支店長から若手の社員まで幅広く手を挙げ、何ができるか議論する。この日は経営陣との初会合だった。

何が原因だったのか。金融庁の検査報告書はみずほにまん延していた「細かい不作為」の数々を赤裸々に指摘する。「障害の報告を受けた社員が関係者間で情報共有しなかった」「以前に同様のトラブルが起きていたのに『軽微』と判断し見逃していた」「機器の故障頻度があがっているのに対応しなかった」

危機管理で有名なハインリッヒの法則によると、一つの重大事故の背後には29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがある。

みずほ銀行が発足して4月で丸20年。02年、11年にもシステム障害を起こしており、企業風土の変革は20年来の問題だ。いくつもの不作為を放置してきたみずほの風土を抜本的に改めなければ、「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」(金融庁)状況は変えられない。

人心の一新は最後の懸けになる。しがらみを断つリーダーとして、メガバンク初の「平成入行」トップである木原が登場した。

改革は一筋縄ではいかない。

世界ではデジタル革命の波が金融を根底から変えようとしている。