観光目的に限ると予約が新型コロナウイルス禍前を2割上回ったとの民間データもある。日本は6月から観光客受け入れを再開するが入国者の制限が残る。回復する旅行需要を取りこぼしかねない。
航空会社約800社の座席供給数を集計するOAGアビエーション・ワールドワイドのデータを分析した。5月時点で欧州は19年平均の91%、北米も83%に達している。
観光需要も急回復している。米マスターカード経済研究所によると、4月末の観光目的の国際線予約は19年同期比で25%増となった。
アジアは回復が鈍い。特に東アジアは「世界で一番回復が遅れている」(OAG担当者)。座席供給数は19年平均の14%にとどまる。
中国は招待状を取得した経済・貿易・科学技術などの関係者に入国を限る。台湾も観光目的の入国を受け入れていない。
日本は6月に入国者数の上限を1日2万人に増やす。10日からは米国など98カ国・地域を対象に観光客の受け入れを再開するが、制約は残る。
国土交通省によると18年時点で外国人旅行消費額は半導体などの電子部品の輸出を超える規模にまで成長した。19年は約3200万人の外国人が訪れ、消費額は年4.8兆円に達した。経済産業省は訪日客消費の9割喪失で、国内総生産(GDP)を0.8%押し下げると試算する。
JTB総合研究所の黒須宏志研究理事は「欧州や米国の旅行市場で正常化はより進むだろう。アジアでも旅行客受け入れを進める国は徐々に広がっている」と指摘する。
新たな変異型などのリスクに備えつつ、入国者数を拡大しなければ、海外の他都市に需要を奪われかねない。
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