https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61235750Z20C22A5TCL000/
「卒業して働き始めると、誰もが一度は、『自分はこの仕事には向いていないのではないか』と不安に感じることがあります。その理由は仕事の内容だったり、人間関係だったり共通する部分も多いと思います。そして『転職した方がよいのではないか』と意識する場面が来るでしょう。それは無理もないことだと思います」
「そのとき、いまの仕事を手放して後悔がなければ辞めて、新しい仕事に打ち込むべきでしょう。後悔が浮かぶようなら、気持ちを切り替えて、もう少し頑張ってみたらよいのではないでしょうか。前に進むかどうか、離れてほかの仕事を選ぶのか判断するのはあなた自身です。自らの人生なのですから、自分には正直に生きてほしいと思います」
増田さんは講師をするかたわらで、新しい経験の場を広げようと、NHK横浜放送局でラジオやテレビのリポーターを務めたり、企画も提案したりしました。さまざまな人との出会いやアドバイスが自らを成長させてくれたと振り返ります。まさにチャレンジし続けた人生だったのでしょう。若者には「後悔しない人生を選んでほしい」と強調していました。
続いてタレントのパトリック・ハーランさんです。パックンの愛称でもおなじみです。米ハーバード大学で比較宗教学を専攻しました。卒業後の1993年、知人の縁で来日しました。
「私には2度ほど、自らの人生や仕事についてじっくり考える機会がありました。2001年に起きた米同時テロのとき、そして現在の新型コロナウイルス禍です。『楽しくない仕事はしたくはない。何のために働いているのか。この仕事の価値は何だろうか』と自問自答する機会になりました。この経験は人生のチャンスだったと思います」
「忙しすぎて、家族とずっと一緒に過ごせたらと考えたこともありました。でも、仕事を続けることを選んだ。自ら選んだ仕事だからこそ常に能動的に動いてみること、確信を持つことが必要だと思います。自信を持って、プライドを持って、チャレンジすることが大事なのですね。ぜひ、学生たちにも考えてほしいです」
パックンは1997年に吉田眞氏とお笑いコンビ「パックンマックン」を結成し、結成25周年を迎えました。芸能活動は人生の大事な柱となっています。日本での生活で体験したこと、考えたことを踏まえたメッセージは世代を超えて人々の心をつかんでいます。
最後はジャーナリストの池上彰さんです。池上さんは1973年に経済学部を卒業してNHKに入局し、松江放送局(松江市)で記者人生をスタートしました。子どものころ、地方記者の仕事を知ってあこがれたことが記者を志望するきっかけになりました。
「働き始めるとつらいことに遭遇するでしょう。たとえば組織が大きな会社に勤めていると定期的に人事異動があります。まったく異なる業務だったり、いままでと違う勤務地に赴任したりすることもあります。考え方だけでなく人間的にも合わない上司に出会うことがあります。そんなとき、退職を意識し始める若者もいるかもしれません」
「希望して入った会社なら、しばらく辛抱してみることも大事です。つらい環境に耐える力というのが、その後の人生にも生かせるのではないかと思うのです。2~3年もたてばまた人事異動があるでしょう。上司が転勤したり、自分が異動したりする場合もあり、環境が変わります。少し長期的に捉えてみてはどうでしょう」
池上さんは東京の社会部でつらい取材経験も積みました。後に、人気番組「週刊こどもニュース」でニュースをわかりやすく伝えるお父さん役を11年間担当しました。記事を書いたり、ニュースを伝えたりする力を磨いてきたからこそいまの池上さんがあるのでしょう。
若者たちには、「長い人生だからこそ、学び続ける力を鍛え、チャレンジする情熱を燃やしていくことが大切です」と助言しています。

コメントをお書きください