· 

不動産大手、国産材の活用加速 住友不動産は保有林利用

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC294400Z20C22A5000000

 

住友不動産は静岡県内の保有林をリフォーム住宅の下地材などに使う取り組みを始めるほか、三菱地所は鹿児島県で木材の加工施設を稼働させて建材や戸建て住宅を売り出す。世界的な木材不足で価格が高騰する「ウッドショック」が続くなか、調達先の拡大や国土の約7割を占める森林の有効利用でコスト競争力を高める。

住友不は30日、静岡県裾野市と保有する森林に関する包括連携協定を結んだ。今後は同社が策定した経営計画に基づき森林の利用や維持管理を進めていく。これまで約185万平方メートルに上る保有林は手つかずだったが、ウッドショックによる木材価格の上昇なども背景に森林の有効活用を決断した格好だ。

まずは県内の木材関連企業と連携し、全体の1割程度である約20万平方メートルの人工林を対象に伐採適齢期のヒノキを切り出す。製材工場で木材に加工し、住友不が「新築そっくりさん」ブランドで扱う中古住宅のリフォーム事業で使う考えだ。

壁や天井の下地材などとして利用する方針で、当初切り出す木材で約400棟を賄うことができるという。2022年3月期の受注棟数は8362棟で現状1割未満の規模にとどまるものの、木材の調達先を広げて新たなサプライチェーン(供給網)整備につなげる。

三菱地所は九州地方で木材の製販一体を進める。同社は20年、竹中工務店や九州地場最大手ゼネコンの松尾建設(佐賀市)など計7社で新会社「MEC Industry」(鹿児島県霧島市)を設立。鹿児島県内で建設していた木材の加工施設がこのほど完成し、本格稼働させると30日に発表した。

事業の特徴は九州地方で伐採した木材の加工や製造、組み立てを担うことで中間コストを省く点だ。戸建て住宅は九州3県で販売し初年度は100棟を目指す。事業全体では10年後に100億円の売上高を目標に掲げる。

三井不動産は北海道を中心に保有する約5000万平方メートルを生かし、木造の賃貸オフィスビルやマンションなどの建設などで使っていく計画だ。

不動産大手が国産材の有効活用に力を注ぐのは、木材価格の高騰に加え、ロシアのウクライナ侵攻で物流停滞が深刻化しているためだ。住友不の尾台賀幸副社長は「木材調達は今後一段と厳しくなるとみられ、分譲住宅やリフォームの価格に転嫁せざるを得ない」との見方を示す。

カギを握るとされるのが国産材だ。日本では国土面積の約3分の2を森林が占める。林野庁によると20年の木材自給率は41.8%。48年ぶりに40%台を回復したが有効活用は道半ばだ。戦後に植林された広大な人工林が放置されている場所は多い。効率的に利用する仕組みの構築が大きな課題になりそうだ。