1990年代の中ごろ横浜支店で用地課長をしていた時に、大規模な土地を取得できたことがあって、本社の開発本部長から慰労していただいた。亀戸の寿司屋でごちそうになったあと「お前頑張ったからこれをお土産にやるよ」と新聞紙にくるんだワインをいただいた。
開発本部長は粋な方で、なんでもこのワインを定期的にアメリカからケースで買い付けているとのことだったが、なんとこれが、超高級ワインの「オーパス・ワン」だった。当時はそこまで有名ではなかったと思うし、多分値段もそれほど高くなかったと思うが、私は「オーパス・ワン」という名前すら知らなかった。
休みの日に、妻と2人で飲んでみたが、ワインの味などわからない当時の私でも「美味(おい)しいワインだなあ」と思ったのを良く覚えている。家で飲む量はたかが知れているので、妻と2人では1本飲みきれず、空気を抜く栓をして冷蔵庫にしまった。何日かして「あの美味しいワインを飲もうよ」というと、妻は「えっ?」と怪訝(けげん)な顔で、「あのワインならシチューに入れて使っちゃったわよ」という驚愕(きょうがく)の答え。「だって新聞紙にくるんであったぐらいだからそんなに高価なものじゃないんでしょう?」という具合だ。
それから、しばらくして「オーパス・ワン」が有名になり、値段が上がってくると、いよいよあの時の「オーパス・ワン」が惜しくなる。我が家では何と贅沢(ぜいたく)なシチューを作ってしまったことか。そのシチューが平日家で食事をすることの無い私の口に入ることはなかった。
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