毎年開催されるシーズン表彰式にちなみ、「シャレン!アウォーズ」を催して優れた活動をたたえている。今年は総勢2000以上の活動のなかから全58クラブが推薦した活動を審査、3つの賞を設けて6クラブを表彰した。
J2岩手の活動は、試合会場の売店から出るゴミを減らしたいという思いからスタートした。丸紅の協力のもとに再利用可能な皿を導入し、使用後は回収して、牛を生産する農業法人で肥料に変えてもらう。
できた肥料で提携する米農家に米を栽培してもらい、その新米をクラブ銘柄で売るほか、地元の子ども食堂へ寄付する。地域の子どもや家族を支える一助となり、ゆくゆくはクラブへの応援となって返ってくるという循環の輪ができた。
「一つひとつ別々に動いていたプロジェクトの小さな輪が、(鉄道模型の)プラレールのように連結して大きな輪になった」と岩手の福田一臣・ホームタウン担当は語る。個別の活動を一つのサイクルとしてつなげられたのは、サッカークラブが間に入る連結パーツとして働いたから。「(日ごろから)スポンサー企業、自治体、消防、地元店舗などと連携関係にある我々が、ハブになれた。一つのきっかけでプロジェクトが連結する。多くの団体を巻き込めるのはサッカークラブの強みであり、モデルにもなれるのでは」と福田氏は期待を込める。
J3富山は20年12月から、介護など周囲の支えが必要な高齢者などに、クラブを支える側になってもらう活動に取り組む。県内の福祉施設、健康食品会社のサントリーウエルネスと協働し、新型コロナウイルス禍のさなかでオンラインでの交流会、選手の訪問などを重ねてきた。
応援する対象ができることで高齢者の会話が増え、食欲が増えて活気が生まれるなど心身によい影響が出てくるという。「『推し』ができると、これほどにも変わるのかとびっくりした」。元日本代表でJリーグ特任理事の中村憲剛氏はその現場を訪れ、サッカークラブが高齢者の健康増進や生きがいづくりに貢献していることに感銘を受けたという。
岩手では会場で出るゴミが3分の1に減った。20人ほどで始まった富山の高齢者「サポーター」は1000人に達した。規模としては小さいかもしれないが、SDGs(持続可能な開発目標)につながるアクションの輪を生み出したことに小さからぬ意義がある。
環境問題、高齢化、過疎化、ジェンダー平等など社会の課題の改善に、組織や個人がどう関わるのか。企業であれば存在意義としての「パーパス」が問われている。そんな時代におけるJリーグクラブのパーパスのヒントを、「シャレン!」の最前線は教えてくれる。

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