· 

中国はこれからも強いのか 米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61107810V20C22A5TCR000/

 

中国の経済力や国際政治での影響力、増強しつつある軍事力をみると、繁栄かつ安定した未来は、中国の巨大な経済力と優れた技術力のどちらが重要になるかにより決まるだろう。経済の先行きには陰りが見えるが、新興テクノロジー超大国としての地位の方が重要になるかもしれない。

 

強みは失われた。中国人労働者のスキル向上に伴い賃金が急上昇し、より発展途上の国が中国の工場にはないほどの低賃金を提供できるようになった。さらに「一人っ子政策」で長期間、人口の伸びが抑えられた結果、労働供給量が相対的に減り、賃金に一段の上昇圧力がかかっている。

 

こうした理由から中国の台頭はついに頭打ちになった可能性がある。多くの新興国は「中所得国の罠(わな)」に陥るとエコノミストは指摘する。経済成長を手柄としてきた支配政党は危険な状況に陥る。国民の期待をよそに成長が頭打ちでも非を認めないからだ。

 

それでも中国は急成長しつつある技術力のおかげで、経済の脆弱性のダメージを一定程度に抑えられるだろう。

 

中国はこの分野で圧倒的な強みを誇る。中国企業は電子商取引(EC)だけでなく顔認証や音声認証も急速に高度化し、独裁国家が権力の集中が制限される政治制度よりもはるかに円滑に技術を開発できるという強みを示した。

もっとも、最大の強みは国家が国内テック企業に政治的に有用な製品の開発を命じ、巨額の資金を投じて活動をとりまとめ、監視技術を他国に売って国際社会での影響力を拡大できる点だ。自国やほかの独裁国家、民主主義国もこうした製品を購入するだろう。

グローバル経済での中国の重要性を考えると、中国の脆弱性が今後も世界のアキレスけんになるのは明らかだ。中国と西側諸国の指導者が、この点を肝に銘じながら変わる関係に対応できるかが、何よりも重要な問題になるだろう。