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大和ハウス工業、最高10億円超住宅で富裕層を顧客に

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF11E8M0R10C22A5000000

 

日本の新設住宅は20年間で約30%減少するなど住宅業界の先細りは深刻だ。同じく高級路線を打ち出すライバルのほか、安価な建売住宅の大量供給で急伸する新興企業などがしのぎを削り、縮小する市場を巡って競争が激化している。

 

従来の2.5倍以上の販売価格

大和ハウスが力を入れるのは、木造と鉄筋コンクリートを組み合わせた最高級モデル「Wood Residence MARE ―希― (ウッドレジデンス マレ)」だ。2021年4月に発売し、これまでの販売実績は約4億5000万円。建物本体の価格はいずれも1億円以上を想定し、10億円を見込む案件もある。大和ハウスの22年3月期の1戸当たり売上高は4100万円で、マレは単純計算で2.5倍以上になる。

「これまでは万人受けするような商品企画をしてきたが、国内で富裕層が増えてきた。活況な市場を逃さない手はない」。同社の木造住宅事業部の沢柳孝クリエイティブディレクターはこう話す。野村総合研究所の調査では、保有する金融資産から負債を差し引いた値が1億円以上の世帯数は132万に達し、10年間で6割近く増加した。足元ではさらに増えているとみられる。

マレの顧客は「圧倒的に会社経営者が多い」(沢柳氏)。近年はデジタル技術を活用して急成長するスタートアップも増えており、自社のM&A(合併・買収)や新規株式公開(IPO)を通じて超富裕層に仲間入りする起業家も多くなってきた。経営者が都内などの自宅とは別に、第2の仕事の拠点として別荘を建てる需要も「新型コロナウイルス禍で加速した」(住宅事業本部ZIZAI デザイン室の桜井恵三氏)。

新築住宅は20年間で26%減

大和ハウスが高級住宅に力を入れるもう1つの背景には、新築住宅の減少がある。国土交通省によると2021年度の新設住宅着工戸数は86万件。足元では微増だが、20年間で26%減った。人口減少とともに、長期的には今後も下落傾向にある。大和ハウスの沢柳氏は「棟数至上主義は終わった」と分析する。

一方で戸数で勝負する企業もある。飯田グループホールディングスやオープンハウスグループなどの通称「パワービルダー」だ。安価な建て売りの戸建てを大量に供給し、右肩上がりで業績を伸ばしている。

大和ハウスは高級住宅に注力し、こうした企業との違いを打ち出す。ライバルの積水ハウスも16年に木造住宅の最高級モデルを発売しているほか、省エネが売りの住宅も拡販しており、販売単価は上昇している。今後の課題は高級住宅を手掛ける他社との競争に勝ち抜けるかだ。