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マンションの価値を守る 管理に「基準」、修繕欠かせず

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB152MV0V10C22A5000000

 

そうした中で分譲マンションの資産価値をどう守っていくかは、所有者にとって重要な問題だ。資産価値を守るには、適切な管理と、建物・設備の適切な修繕を続けていくことが欠かせない。

千葉県在住で自宅マンションの管理組合理事を務める男性は、最近、マンションの管理状況を評価する新制度について調べている。「自宅の資産価値を守るのに役立つかもしれない」

マンションの資産価値は管理により大きく変化する。共有部分を清掃して設備の更新を続ければ価値は維持され、より高い価格で取引される。しかし、管理が悪ければ住人の住み心地は悪化し、資産価値は大きく下がってしまう。

そのマンション管理の「質」について評価する制度が2022年4月にスタートした。「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」の2つだ。

管理計画認定制度は管理計画が一定の基準を満たすマンションを地方自治体が認定する仕組みだ。管理組合が自治体に申請すると、管理状況を審査。基準に適合すると判断されれば認定を得られる。4月から東京都板橋区、盛岡市、大阪市など一部の自治体で受け付けを始めている。

マンション管理適正評価制度は管理会社の業界団体が運営する。管理計画認定制度の評価基準16項目を含めて合計30項目について評価する。管理状態の水準を6段階で判定し、結果をウェブサイトで公開する。管理計画認定制度を補完する仕組みともいえる。

2つの制度は始まったばかりで浸透には時間がかかるとの見方もある。だが、不動産コンサルティング会社、さくら事務所(東京・渋谷)の土屋輝之氏は「これまではマンション管理の状態を客観的に判断する基準がなく、改善目標を定めるのが難しかった。今後は2つの制度の評価基準が明確な目標になる」と指摘する。

管理費・積立金、都心で上昇

マンションの資産価値を守るため、適切な管理体制を築き、必要な修繕を続けていくには、当然ながらコストもかかる。さくら事務所が東京都心部の9区で大手マンションデベロッパー7社が分譲した新築マンションの毎月の管理費と修繕積立金を集計したところ、22年分譲の平均管理費は17年に比べて17%上昇。修繕積立金にいたっては平均49%も上昇している。

人件費の上昇は管理費にも跳ね返る。新築以外の既存マンションでも、管理会社から委託費の値上げを打診されるケースが増えているが、区分所有者の抵抗が強い。管理組合側が値上げをのまないと「管理会社から契約更新を拒否され、いわば『見放される』形になる管理組合が増えている」(さくら事務所の土屋氏)という。