https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61013390R20C22A5EA1000
2021年から続く世界的な木材不足にロシア発の「ウッドショック」が追い打ちをかけた形だ。コスト上昇を吸収しきれず、値上げを考える住宅会社も出てきた。
ロシアは有数の木材輸出国だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、新型コロナウイルス禍前の19年に輸出した製材の量は世界の21%を占め、国別で最多だった。寒冷地で育つので木目が細かく「価格の割に質が良い」(木材商社)とされる。
3月にロシアは米欧や日本を「非友好国」に指定。合板原料の単板や木材チップの輸出を禁じた。日本の合板メーカーは輸入単板の8割を同国に頼っていたため国産への変更を急いでいる。
木材市場では21年、米国の住宅人気などで木材が世界的に不足する「ウッドショック」が発生。国産合板は同年に35%値上がりしていた。ウクライナ危機後、国産合板は一段と値上がりしている。指標品(厚さ12ミリメートル)の価格は5月中旬時点で1枚1900円。侵攻前から過去最高値だったがさらに19%上昇した。
木造住宅を手がける住宅会社にとって木材高騰は痛手だ。企業は対策に動き始めた。注文住宅のオープンハウス・アーキテクト(東京)は木材の調達先をロシアから欧米に変更。1月に600億円を投じてロシアの森林企業を買収した飯田グループホールディングスも対応の検討を始めた。
大東建託は1月、21年のウッドショックを受け、自社が手がける集合住宅の本体販売価格を2%上げたばかり。ウクライナ危機が木材価格をさらに押し上げており「今年度も値上げを検討せざるを得ない」と話す。
ウクライナ情勢の混迷で、ロシアの木材禁輸が解かれるめどは立たない。影響が長引けば住宅会社の経営には大きな打撃となる。住友林業は22年12月期の国内住宅・建築事業について、経常利益の見通しを95億円下方修正した。木材価格の高騰が70億円ほど利益を押し下げるとみる。
三井ホームの吉田晋也営業推進部長は「木材価格は2年で5割以上高くなった。1棟で100万円以上コストが上がっている」と語る。木材は半年前から調達しており、ウクライナ危機の影響はまだ出ていないというが、木材不足の長期化が調達価格に与える影響を危惧する。

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