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金利上昇局面の運用戦略 日本株は割安、投資に妙味 ジェイ・ユーン氏

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61000120Q2A520C2ENG000

 

米国の大手生命保険傘下で、世界上位30社に入る約6500億ドル(83兆円)の運用資産額を持つニューヨークライフ・インベストメント・マネジメント(NYLIM)のジェイ・ユーン最高投資責任者(CIO)に投資戦略を聞いた。

 

――NYLIMの運用の特徴は。

「債券や株式のほか、未公開企業への融資や不動産などマルチアセットの運用に強みがある。資産ごとに分かれた専門性の高い運用子会社を持つ『ブティック制』が特徴だ。2016年に日本法人を設立し、年金など日本の投資家からは60億ドルの資産を預かっている」

――足元の金利上昇局面でどう投資戦略を変更しましたか。

「株式はグロース(成長)からバリュー(割安)株へ資金をシフトさせている。22年初めにはバリュー株のなかでもシクリカル(景気敏感)な銘柄を減らし、ディフェンシブ銘柄にシフトした。米国株は依然として割高感があるため、欧州や日本株に目を向けている。ただウクライナ危機や資源高で欧州は景気後退への懸念が強くなっていることを考えれば、日本株は魅力的だ。バリュエーションも相対的に低い」

――中銀の金融政策についての見通しは。

「2022年を『移行の年』と位置づけている。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めによる金利上昇基調は少なくとも今年いっぱいは続き、米10年債は3~3.25%程度まで上昇すると考えている。中銀による支援を頼みとしてきた経済は民間部門の力で自立しなければならない」

「日本は例外だ。日銀は低金利維持を優先し、為替レートの安定を諦めているようにみえる。日本の大規模金融緩和プログラムはもはやもう戻れないところまできている。黒田東彦総裁は現行方針を維持すると強調しており、今後も円安は続く可能性がある。1ドル=150円もあり得なくはないだろう」

――日本の投資環境の先行きは。

「日銀が方針転換せずに日本でも2%を超えるインフレが進むようになれば、国民の(実質)購買力の低下は避けられない。自分は日本での勤務も長く、慎重な国民性を理解しているが、これからも日本人が銀行預金や貯蓄に固執するのか疑問を持っている。日本の投資家の購買力を守るため、ニーズに応じた幅広い資産運用をしていきたい」