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物価高、成長持続に試練 本社景気討論会

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61002620Q2A520C2EA2000

 

日本経済については個人消費に回復の兆しが見えるとの指摘がある一方、賃金上昇の鈍さを懸念する声も出た。

 

――ロシアのウクライナ侵攻で、米欧のインフレが加速している。

コロナで消費二極化 村田氏(高島屋社長)

村田氏 食料品や輸入品などで価格上昇がみられる。円安やエネルギー価格の高騰など様々な要因があり、インフレは長期化すると危機感を持っている。輸入雑貨の特選品はすでに1月に値段は上がっているが、富裕層の消費は堅調で影響は大きくない。他方、食料品は中間層の消費に影響する。生活防衛的な動きが出ないか危惧する。

株安、逆資産効果も 日比野氏(大和証券グループ本社会長)

日比野氏 欧州は原油や天然ガスなどでロシア依存度が高く、経済制裁の代償も大きい。米国はインフレが強烈で、消費者心理がリーマン・ショックの水準まで冷え込んだ。米国の経済人はすでに2021年時点で次の課題はインフレだと言っていた。米連邦準備理事会(FRB)の利上げは遅きに失したと言わざるを得ない。想定以上の利上げが経済に悪影響を及ぼさないか注視している。米国の家計は多くの株を持っており、株安で消費が落ち込む「逆資産効果」を警戒している。

利上げ、米家計債務に影 大槻氏(マネックス証券チーフアナリスト)

大槻氏 米国はインフレを少し甘くみていた。新型コロナウイルス危機からの回復によるもので早晩落ち着くと思われていたが、長引いた。そこにウクライナ問題が浮上した。景気の鈍化が懸念される。

 

米国ではリーマン・ショック以降落ち着いていた個人の借り入れが再び増えているのが懸念材料だ。信用度が高くない利用者層である「サブプライム」の延滞率が一部で過去最高になっている。コロナで一時的に返済が免除されていた人も含め、動向に注目している。

中国経済、失速の恐れ 岩田氏(日本経済研究センター)

岩田氏 ウクライナ侵攻は冷戦後、我々が享受してきた世界の平和が維持できなくなったことを示す。少なくとも世界は2回目の冷戦に入っていく。今回の戦争は容易には終わらない。数カ月ではなく年の単位で考えないといけない。

 

中国はゼロコロナ政策を厳しくやり過ぎており、物流が動いていない。4~6月期はマイナス成長に陥るのではないか。22年全体も政府が掲げる成長率目標5.5%はとても無理で、4%を切る可能性がある。不動産の不良債権も相当蓄積されており、足かせになろう。

村田氏 消費は上向きつつある。ゴールデンウイークは大変な人出で店頭がにぎわった。売上高はインバウンドを除いて19年比2割増だった。

他方、消費の二極化がコロナで進んでいる。商品別に売り上げを見ると、富裕層向けはコロナ前比5%減にとどまる。中間層は1~2割減っている。特選宝飾の高額品はプラス29%と非常に伸びているが、食料品は伸び悩んでいる。若い人を含め、時計やアート作品など資産価値のある消費は惜しまない一方、生活品には財布のひもを締める。メリハリある消費が目立つ。

日比野氏 コロナで積み上がった過剰貯蓄は60兆円あり、これが物価高の悪影響を緩和する方向で働く。企業業績は史上最高益を記録した企業がたくさんあった。サプライチェーン(供給網)の正常化が進めば自動車生産などの伸びも期待される。円安効果もあり、今年度も最高益更新があるだろう。

大槻氏 国内で高級品が売れているのは、今までの株高で資産が増えた効果が大きい。今後、物価と所得がともに上がる好循環が実現できるかが焦点だ。夏以降、大企業がコストカットだけでなく、どれだけ給与を上げていくかが重要となる。