都のコロナ時短命令「違法」 グローバルダイニング訴訟 東京地裁、過失は否定し賠償認めず 運用「慎重であるべき」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60835550W2A510C2CM0000/

 

松田典浩裁判長は命令を出す必要があったとは認められず、都の命令を違法と判断した。一方で、知事の過失責任は否定し、同社側の賠償請求は棄却した。

 

原告側は判決を不服として即日控訴した。

訴訟では都が2021年3月に特措法に基づき出した午後8時までの時短命令の違法性が最大の争点となった。

判決はまず、特措法の規定が、命令を発出できる要件を(1)時短要請に応じない(2)特に必要があると認められる――場合に限定していることに言及。運用は「慎重であるべきだ」として、「不利益処分がやむを得ないといえる個別の事情が必要」という判断の枠組みを示した。

そのうえで、グローバルダイニングに出された命令がこの枠組みに合致するかを具体的に検討した。同社の店舗が換気や消毒などの対策を取っていたことや、命令が出た時点で都内で2000店余りが要請に応じず夜間営業を継続していた点を踏まえ、「同社の店舗の夜間営業が感染リスクを高めていたと認める根拠がない」とした。

判決は「4日間しか効力が生じない命令をあえて発出した必要性について、合理的な説明はなく、命令を行う考え方や基準についても公平性の観点から説明がなかった」として、命令は特措法の要件を満たさず違法との結論を導いた。

 

都側は「上場企業である同社の社会的影響力は大きく、他店の営業継続を誘発する恐れがあった」と主張していたが、判決は「意見表明にとどまり、触発されて夜間営業を継続した飲食店もない」と退けた。

地裁は続いて、賠償責任について検討した。当時は専門家が一様に命令は必要だと認めていたほか、特措法に基づく最初の命令で参照すべき先例がなかったことなどから、知事の命令発出に過失はなかったとして賠償責任は否定した。

狙い撃ちされたとする同社側の主張についても「命令を受けたのは原告だけではない」として認めなかった。

判決によると、都は21年3月、時短要請に応じなかった飲食店27店舗に対し、特措法に基づいて全国で初めての時短命令を出し、午後8時以降の営業停止を命じた。うち26店舗がグローバルダイニングの運営店舗で、同社は命令を受けて営業時間を短縮後、提訴した。