https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60831140W2A510C2EE9000/
フィンテック勢の強みは、徹底した顧客目線による利便性の追求にある。デジタルは低コストな分、少額の金融サービスを提供できる利点もある。
「友達に車を借りるから半日だけ保険に入ろう」。決済アプリ「PayPay」では、スマホをタップするだけで当日でも保険に入れる。自動車保険なら12時間800円からという手軽さだ。対話アプリ「LINE」には証券、個人向けローンなどの金融メニューが並ぶ。
革新を生んだのはフィンテックのサービスと金融機関のデータをつなぐ「API」と呼ぶ仕組みだ。18年施行の改正銀行法で、2年以内のオープンAPI公開の努力義務が課せられた。これで新興勢が金融サービスを手掛けやすくなった。
金融大手も腰を上げる。三菱UFJ銀行は21年末にスマホのアプリ「Money Canvas」を始めた。多様な金融商品をワンストップで提供する。アプリだけで金融サービスが完結する「スーパーアプリ」の覇権を誰が握るか。新旧勢力の競争が熱を帯びる。
米国では個人投資家が群がったスマホ証券のロビンフッド・マーケッツが米株式市場を揺らした。南米ではデジタル専業銀行のヌーバンクの利用者が21年末で約5400万人と、米JPモルガン・チェースのモバイルバンキングの利用者数(約4550万人)を上回る。
日本の家計の金融資産は21年末に初めて2000兆円を突破した。ただし過去20年の伸び率は1.4倍と約3倍の米国との差はむしろ広がった。現預金が54%と高く、資産が増えない。
岸田文雄首相は貯蓄から投資への流れを後押しする「資産所得倍増プラン」を打ち出した。バブル崩壊やリーマン・ショックを経てリスク回避志向が強まり、投資に慎重な日本人の行動を変えるのは容易ではない。かけ声倒れとならないため、フィンテックの活用を促すための官民の取り組みが欠かせない。
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