社説)中国経済失速の影響注視を

上海の都市封鎖など中国の厳格な「ゼロコロナ」政策は、既にコロナ後を見据えている世界景気の大きな下押し要因になりうる。今後の動向をよく注視し、備えを敷くべきだ。

主要産品の生産量は自動車が前年同月を4割超下回り、パソコン、スマートフォンも不調だ。小売売上高は同11.1%のマイナスで、不動産開発投資も振るわない。

コンテナ取扱量で世界トップだった上海港は物流が滞り、中国から部品が届かない日本の自動車メーカーの工場稼働に影響が出た。中国工場の停止は米アップルの経営も直撃した。世界で販売されるアップル製品の大半は、台湾企業の中国工場で生産されている。

明るい兆しもある。上海市は感染拡大に歯止めがかかったとして6月に封鎖を解除する方向だ。

ただ北京など各地で規制が続いており、生産・消費が平時の状況に戻るには相当時間がかかる。今年の中国の成長目標「5.5%前後」達成は容易ではなく、日本経済への影響も避けられない。

中国がゼロコロナ政策を変える兆候はない。習近平政権は5月初旬の重要会議で同政策の徹底を確認した。5年に1度の共産党大会を今秋に控える以上、コロナ対策での失敗は許されず、代わりに経済が犠牲になる恐れがある。

ゼロコロナ徹底を受けて、9月に杭州で開催予定だったアジア競技大会は早々と延期が決まった。23年6~7月に中国の10都市で行われる予定だったサッカーのアジア・カップも中国開催を断念し、代替地を探している。

巨大な中国市場の魅力は大きい。とはいえ共産党の独裁政権下ではゼロコロナや突然の政策変更など想定外のリスクは避けられない。グローバル企業は世界的な製品供給に支障が出ないよう、サプライチェーン(供給網)の再編や分散を検討する必要がある。