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用地課長の務め 三井不動産社長 菰田正信

不動産価格はかつての土地神話の時代とは違って右肩上がりではなく、シクリカル(循環的)に上昇期と下落期が訪れる。従って上昇期から下落期への転換の直前に土地を仕込むと、大変な苦労をすることになる。このような時期に土地を買ってはいけない。

このような時期は未(いま)だ上昇期なので、エンドのマーケットは極めて好調で、当然ライバル会社の指値(さしね)が高く、土地の売り主も強気なため、決していい値段では土地を買えない。一方用地課というのは土地を買ってなんぼの世界で、担当者も自分の成績がかかっているので、足元のマーケットが良ければ、当然担当者からの買い圧力が増す。それをマーケットの先行きが危ういということだけで却下しなければならないので、因果な仕事だ。

しかし、逆に一番利益がでる土地というのは、下落期から上昇期に転換する直前に買った土地だ。それは、マーケットが悪いので競合他社が弱気だからだ。

ところが、買っていけない時期に土地を買っていると、簿価の高い土地でバランスシートが膨らんでいて新たな土地を買う余力がない。買った土地が赤字になるだけでなく、利益の出る土地を買う機会も逸するわけだ。

ということで、用地課長の最も大事で最も難しい仕事は、買ってはいけない時期に土地を買わないことだ。