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曖昧になる仕事と余暇の境 ワーク・アンド・キャリア・ライター エマ・ジェイコブズ

こう言うと、まるでブレジャー業界の回し者のように聞こえるのは承知の上だ。働き方に関して書き始めて以来、関連業界からブレジャーの増加について聞かされてきた。ホテルも航空会社も売り上げを取り戻そうと必死なのはわかる。海外出張のついでに観光するのも珍しくない。ただ今回はブレジャーの時代が到来したと考えられる。

理由は柔軟な働き方の定着だ。米エアビーアンドビーでは21年、1カ月以上の長期の宿泊予約が全体の約2割を占めた。同社自体も先日、新しい働き方を発表した。同じ国内なら場所を問わず給与も減額しない。年間90日を上限に他国からの勤務も認めるという。

米コンサルティング会社デロイトは旅行に関するリポートで、オフィスから解放され、休暇に仕事を組み入れるのに積極的な人たちを「ラップトップ・ラガーズ(ノートパソコンを持ち運ぶ人々)」と呼んだ。彼らはよく旅行をし、日数や予算が予定を上回ることもしばしばで、購買力も高いという。

ビジネス客を頼りにしていた業界は新たな収入源が必要だ。米ヒルトンなどのホテルチェーンはテレワーク需要を当て込み、客室を仕事場として日中貸し出すプランを提供している。会議室やコワーキングスペースなどを時間貸しするホテルも急増している。

仕事に余暇の要素を含める企業もある。従業員が別々の場所で働くようになったため、企業は一堂に会する機会をつくろうと工夫を凝らす。従業員にリモート勤務を推奨している英国のPR会社は最近、全員で4日間、オランダのアムステルダムへ行った。会議や飲み会に加え、観光する時間もとった。

顧客情報管理の米セールスフォース・ドットコムは米カリフォルニア州にリゾート施設を開設した。従業員が協力したりトレーニングに参加したりしながら、企業文化に浸れるようにするのが狙いだ。この2年間、何事もなかったかのようにオフィス勤務を再開し、日常に戻ることに戸惑う人は多い。その点、イベントに同僚らと参加すれば気分が上がる。何カ月も外に出られなかった従業員に羽を伸ばしてもらえば、士気や創造性も高まりそうだ。

オンとオフの融合は急ピッチで進んでいる。その結果、完全にリラックスする時間がなくなる恐れがある。個人の生活だけでなくカフェやクラブ、ホテルなども仕事に侵される懸念が強まっている。感染拡大を受けて生活のあらゆる場面に仕事が入り込んだが、今や仕事場が忍び込みかねない。リモートワークのスペースを競うように提供している飲食・宿泊業界が少し風変わりな大きな職場のように思えてきた。

大半の人は仕事に余暇が入り込むのは構わなくても、余暇が仕事場に侵食されるのはまっぴらだろう。

筆者は先日、コワーキングスペースや企業イベント用の会場を提供するホテルを訪れた。同僚はいないのに同調圧力を感じ、ついパソコンを開いて書き物をしてしまった。今年がブレジャー元年になっても、純粋に余暇を楽しむことは忘れずにいたい。