円安に揺れる日本経済(中) 高まるインフレ「体感速度」 塩路悦朗・一橋大学教授

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60808850W2A510C2KE8000/

 

米国では22年3月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で8.5%という高い伸び率を記録した。米連邦準備理事会(FRB)は3月に0.25%、5月に0.5%の利上げに踏み切った。金融引き締め傾向は今後も続くと予想される。

 

今のところ、人々のインフレ予想を変えて直ちに広範なインフレにつながるほどのものとは思えない。だがこの傾向がじわじわと強まってくれば、今後については警戒が必要だろう。

一つだけ言えるのは、いったんインフレ予想に火がついて、スパイラルが始まってしまったら、この国の場合は特に厄介ということである。日本では現在でも米国ほど需要が旺盛なわけではない。この状況下でインフレが本格化するのを待ってから日銀が引き締めを始めると、ただちに景気は後退に転じるだろう。つまりすぐにスタグフレーションに陥る可能性が高い。

政府・日銀は長年にわたり、インフレ予想を引き上げるために努力してきた。だがインフレスパイラルを招くリスクを考えれば、向こう1年くらいは、「寝た子」が起きないでいてくれることを願うべきだろう。

 

<ポイント>
○足元の円安と資源価格高騰の影響限定的
○人々は日常買うモノの価格に敏感に反応
○日銀はインフレ予想の動向に警戒が必要