https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60771400T10C22A5ENG000
米大手投資ファンド、オークツリー・キャピタル・マネジメントのマーク・ジェイコブズ氏に投資戦略を聞いた。
――経済環境の変化が不動産市場にどう影響していますか。
「コロナ以降、オフィス不動産の市況の先行きは不透明になった。一方、在宅勤務の普及で個人が家にいる時間が長くなり、住宅市場ではより大きな家、書斎のある家、くつろげる庭のある家などが求められるようになった」
「オンラインショッピングが一段と普及し、物流施設への需要も拡大。消費者の注文商品が着実に届くような距離での倉庫への需要も高まった。こうした経済的変化を受け、我々は集合住宅と物流施設への不動産投資を集中して手がけている」
――米住宅市況は過熱ぶりが目立ちます。
「2008~09年の金融危機をきっかけに建設が止まり、コロナ前から住宅不足が鮮明になっていた。現在では少ない住宅に需要が集中する状況になっている。これが全米で住宅価格や賃貸価格が高騰している背景だ。コロナ禍でこの傾向が一段と強まった」
――投資する住宅物件をどう選別していますか。
「ロサンゼルスやサンフランシスコ、ニューヨークやボストンといった都市部では住宅価格の過剰な上昇が目立つ。賃貸料も高いうえ不動産税や所得税も高額で、カリフォルニア州ではガソリン税が全米で最高水準だ。その結果、こうしたコストの高い地域から他の地域への人口流出が加速している」
「人口が流入している地域としてはアリゾナ、ユタ、コロラド、テキサス、ジョージア、フロリダ、ノースカロライナ州などが挙げられる。これらの地域は所得税もゼロか極めて低く、生活コストが低水準。学校の質は高く、娯楽も豊かで生活水準が高いという特徴がある。我々はこうした潜在成長力のある地域の集合住宅に投資し、家賃収入を確保している」
「不動産物件の需要と供給の不均衡に着目して、どこの地域が最も高リターンを確保できるかを把握することが重要だ。株式や債券などの金融市場は今年初めからボラティリティーの高い状況が続いている。不動産投資はこうした環境下で好機になりやすく、魅力的な物件を探している」
――物流物件の投資先は。
「東西海岸の地域は土地が少ない一方で、港からの物流が活発で倉庫の需要が大きい。物件の供給が限られても需要は増えているため空室率が低く、高い賃貸収入を得られる。商品を顧客に着実に届けるための輸送コストは劇的に上昇している。アマゾン・ドット・コムなどのネット販売業者だけでなく、一般の事業会社でも東西海岸の地域で物流施設の需要が高まっている」
――インフレ圧力が強まっていますが、賃貸収入はインフレに見合った上昇を確保していますか。
「集合住宅のリースは通常、1年単位なのでインフレを家賃に転嫁しやすい。その結果、我々の不動産投資は効果的なインフレヘッジになっている。家賃の上昇に見合ったサービスをテナントに提供するために、オートロックやリモートロックなどの住宅関連のテクノロジーへのインフラ投資も欠かせない」

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