https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60676860R10C22A5TB1000/
非代替性トークン(NFT)技術を用いたバーチャルスニーカーに進出したほか、1日あたり5000万人が訪れる人気オンラインゲーム「ロブロックス」にも店舗を設置。リアルで磨いた世界的なブランド力を仮想空間にも浸透させ、デジタルネーティブの若い世代とのつながりを目指す狙いがある。
4月下旬、ツイッター上でNFTブランド「RTFKT」とナイキが開発した、ある靴が話題になった。見た目はナイキのスニーカーブランド「ダンク」に似ているが、リアルな世界では履くことができないNFTベースのデジタルスニーカーだ。
外観はアイテムを使って現実の商品にはない色やデザインに変更することができる。アート作品のように収集して楽しむほか、将来は仮想空間で自分のアバター(分身)に履かせることもできるようになる可能性がある。NFT売買サイトの米オープンシーでは現在、下値で1足40万~50万円前後で売られている。
RTFKTは2021年12月にナイキが買収したブランドスタジオだ。デザイン性の高さなどで知られ、過去に発売したNFTスニーカーは7分間で310万ドル(約4億円)の売り上げを記録したこともある。ナイキはリアル空間でブランド展開を始めてから50年がたつが、RTFKTはメタバースの世界でわずか2年ほどで著名な地位に上り詰めた。
メタバースの開発を手掛けるMetaTokyo(東京・渋谷)の鈴木雄大最高戦略責任者(CSO)は、「若い世代にとって身につけるファッションがデジタルファーストになる可能性がある」と語る。
「デジタル分野における最高の経験を生かして、ウェブ3.0での経験を構築し、コミュニティーを拡大する」。ナイキのジョン・ドナホーCEOは、今後は仮想空間の開拓に一段と注力する構えだ。調査会社マーケッツアンドマーケッツによると、NFT市場は22年に30億ドル、27年には136億ドルに拡大する見通しだ。粗利益率の高いNFTスニーカーなどの販売が増えれば収益に寄与するほか、現実のビジネスのブランド価値も押し上げられるとみる。
一方、アディダスやアシックスなどの競合大手も続々とNFTに参入している。NFTは取引価格の乱高下が目立つなど、どこまで社会に受容されるかといった不透明さも残る。ナイキは新領域であるメタバースへの布石を打ちつつ、現業を磨き続けられるかが当面の課題となる。
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