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ツワモノ個人投資家に聞く  「バイ・イン・メイ」の条件

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB272DF0X20C22A4000000

 

投資関連のユーチューバーをマネジメントするZeppy代表の井村俊哉氏、ベテラン投資家として知られるDAIBOUCHOU氏、投資初心者向け情報サイトを運営する竹内弘樹氏の著名投資家3人に波乱相場の乗り越え方を聞いた。

 

井村俊哉氏 マクロ視点で情報収集も

ミクロの部分から個別企業を分析して銘柄の選定をする投資スタンスは、今回の波乱相場に際しても揺るがない。外部環境がファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)にとってポジティブに働く銘柄は、しっかり株価も上昇している。

現状の相場はここ十数年の中で最も予測が立てにくい状況だと感じる。ウクライナ侵攻もチャートは織り込みきれていなかった。過去の「○○ショック」ではファンダメンタルズに直接的に響かない場合が多かった。だが、今回は資源価格の上昇が大きな影響を与えている。

SNSなどを活用して海外のエネルギー関係のアナリストや投資家の発信をチェックするようにしている。海外メディアを含めたエネルギー関連の記事も1日20~30本は目を通している。

不動産やコモディティにもそれぞれに適した投資対象があると思うものの、自分にとっては株式に一番安心感がある。

下落リスクがある中での銘柄選びでは手元の現預金から有利子負債を引いたネットキャッシュに注目している。現預金は業績の下押し圧力があった場合にはクッションの役割を果たすからだ。現預金や不動産などの資産を持つ企業に投資することで波乱相場に対応している。

DAIBOUCHOU氏 波乱相場こそ「鈍感力」

足元では現金比率を、ポートフォリオ全体の2~3割程度まで高めている。現金や低リスク資産の大部分は米ドル建てで持っており「円安耐性」もある。万一のために備えるバッファー資産があることは、心理的な安心感にもつながる。

相場が崩れた今年1月にも現金比率を高め、2月には東京きらぼしフィナンシャルグループ(7173)、ふくおかフィナンシャルグループ(8354)など地銀株への投資を増やすことで「守り」の運用にシフトした。目先の相場もボックス圏で推移するとみており、フルポジションで、がんがん買い進めるような状況ではない。

とはいえ業績の伸びが見込めるにも関わらず、株価が過度に割安になった銘柄については「攻め」の買いも入れてきたい。足元で注目しているのが医療関連だ。例えば歯科材料メーカーの松風(7979)や人工関節などの医療機器を手掛ける日本エム・ディ・エム(7600)に投資を行っている。新型コロナウイルス感染が沈静化するにつれて、歯科や整形外科などコロナ関連「以外」の医療の需要が増えると見ているためだ。

ネット関連の新興株でも、割安感が出てきたものがある。ネット企業のGMOペパボ(3633)は、コロナ相場で一世を風靡した銘柄の1つだが、ここまでの調整局面を経て株価の割安感が高まっており再投資を決めた。

足元では新規株式公開(IPO)株にも注目している。直近では3月に新規上場した守谷輸送機工業(6226)に買いを入れた。同社はオーダーメードの荷物用エレベーターで最大手の「ニッチトップ企業」だ。上場初日の株価は振るわなかったが、業績面の安定感もあり割安とみて投資を決めた。ピカピカの高成長株ではなく、地味ながらも着実に成長する銘柄を発掘することで、確実に運用成績をあげていきたい。

竹内弘樹氏 「お守り」銘柄で乗り切る

成長が期待できる割安株への投資が基本的なスタンスだ。売り上げや利益が毎年10~20%伸びている成長企業を対象とし、PER(株価収益率)や割引キャッシュフロー(DCF)法から割安と判断できる銘柄に投資する。

対象となる銘柄は中小型株が多い。こうした銘柄は流動性が低く簡単に売買できないため、保有は続けながらも持ち分をやや縮小している。

代わりに投資しているのが「お守り」と呼んでいる銘柄だ。長期投資を続けるためには、短絡的にならず、下落に動じない心のケアをしていくことが重要だ。

お守り銘柄の1つ目がINPEX(1605)。原油相場との相関性も高く、配当利回りも比較的高い。このまま原油高が続けば、今後のさらなる業績の上方修正もあるとみている。

もう一つはNEXTFUNDS日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(1357)。大きな利益を狙っているのではなく、リスクヘッジが目的だ。長期保有には向かないと思っているが、日経平均株価が高騰した際や休日前の「ここぞ」と思ったタイミングに購入している。

とはいえ、現状の相場環境は文字通り「波乱」であるため、下手に動いて大きな損失を被ることだけはしないように心がけている。少し株価が上下しているからといって買い向かったり、焦って売却したりしてしまうと損失を重ねてしまう可能性が高い。損失分を強引に取り戻そうとして投資経験が少ないのに信用取引に手を出すことは避けるべきだ。

方向性がなく、ボラティリティー(変動率)の高い相場では、小さな材料でも大きな変動が起きる。長期投資を続けるためには荒波にあらがうのではなく、転覆だけはしないように嵐が過ぎるのを待つのも方策だ。