https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF203KC0Q2A320C2000000
その時代から間もなく100年。2025年万博を迎える大阪・関西は、雌伏の時を越えてどこへ向かうのか。現在地と未来図を考える。
かつて繊維業で栄えた商都大阪の中心地、船場(大阪市中央区)には金融、製薬、商社などが集積した。綿業会館など築100年前後の近代建築群が栄華を今に伝える。
ホテルやタワマン続々、若い世代が流入
バブル経済崩壊後、企業の倒産や流出で空洞化した船場だが、この10年で潮目は変わった。問屋やビルの跡地にホテルやタワーマンションが建ち、若い住民も目立つ。
ガス灯が並ぶ三休橋筋で建設中の東急不動産のブランズタワー大阪本町(43階建て)は「1期分の分譲は予想を上回る売れ行き」(関西住宅事業本部の池田智紀販売部統括部長)。住民の受け皿は着々と増えている。
中央区の21年の人口は約10万7千人。10年で30%以上増えた。船場の活性化を担う一般社団法人、アーバンツーリズム大阪・船場の池永純造代表理事は「万博に向け、住んで良し、訪れて良し、働いて良しの街へと加速していきたい」と語る。
個人の富裕層も熱い視線を注ぐ。「顧客は来日できないが、オンライン取引は活発」と台湾の不動産仲介大手の日本法人、信義房屋不動産の詹海棠(せん・かいどう)大阪支店長。投資対象としては「利回りなら他の先進国、値上がり期待ならアジアの他都市」に軍配が上がるが、大阪は価格の手ごろさ、住みやすさ、さらに25年の万博を前に「変貌していく街への期待感がある」という。
変わりゆく大阪――。その象徴はJR大阪駅(同市北区)北側の再開発エリア「うめきた2期」だ。オフィスやマンション、地下駅、約4.5ヘクタールの公園を配置。24年に先行まちびらきを迎える。同様に貨物駅跡の再開発である東京・汐留より約20年も遅れたが、1期のグランフロント大阪などが13年に開業した前後から風景は一変してきた。
大阪駅周辺では阪神百貨店が入る駅直結の大規模オフィスビルが今春完成。さらに阪急ターミナルビルなどの建て替えも今後計画されている。他にも学術・研究拠点として24年に中之島(北区)の未来医療国際拠点、25年に森之宮(城東区)に大阪公立大の新キャンパスが開設される予定だ。
「憧れの都市」へ2度目の万博を好機に
目指す都市像の分析では、東京や米ニューヨークなどの金融都市とは異なる魅力がある都市に着目。住みやすさや起業支援の仕組みで再生したコペンハーゲン(デンマーク)、米シアトルなど6都市を参考に挙げた。
たとえば、シアトルの原点は港湾都市。そこから造船、航空宇宙産業が栄え、今はソフトウエア産業が中心だ。時代の変化に応じて産業構造を転換し、世界から人が集まる都市の姿を参考に、大阪が進む道を描きたい。
ビジョンをまとめた有識者グループの座長、橋爪紳也大阪公立大特別教授は「絶えず新しいものが生まれ、そこで学びたい、働きたいと若者がやってくる。都市はそういう憧れの対象でなければならない」と語る。
大阪の都市力、世界主要48都市で36位 5年連続ダウン
大阪の都市力の現在地はどうか。森ビル系のシンクタンク、森記念財団都市戦略研究所の「世界の都市総合力ランキング2021」で、大阪は世界の主要48都市の36位と5年連続で順位を下げた。東京は英ロンドン、米ニューヨークに続き6年連続の3位だった。
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