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若い世代、価値観は多様 シェアリングエコノミー協会代表理事 石山 アンジュ氏

――女性や若い世代の憲法観についてどう見ていますか。

 

私にとって憲法は企業の存在意義を示す『パーパス』のように、国のビジョンとなる。何を本質的に豊かさや幸せとして捉えるか、価値観や精神性のよりどころを示す役割があると感じている」

「憲法の文言の建前と実態のズレに嫌気がさしている面はある。例えば戦争放棄を掲げる憲法9条には『国際平和を誠実に希求し』とある。世界情勢は軍拡に向かう。日本はより『核のない世界』をはじめ対話で平和をつくることにリーダーシップを持つべきだ」

――「本音と建前のズレ」を解消するために憲法を改正すべきですか。

「改憲論議はより民主的に広く対話を重ねるべきだ。高齢世代の政治的発言力が高まる半面、若い世代の声を聞きに来てくれている感じもない。十分に議論されずに改憲が通ってしまいそうな不信感がある」

「時代がかわれば幸せの物差しも変わる。その尺度となる憲法の改正自体は十分議論がされるべきだ。むしろ対話をし続ける機会が圧倒的に足りない。憲法をルールとして過信すべきではない」

「若い世代自身が憲法について考えるだけでなく世代間の交わりをつくり、憲法論議をする場が常に必要だ」

――時代の変化を踏まえ憲法の議論にどのような観点が必要となりますか。

「私は人生で『拡張家族』という生き方をしている。家族面談をした上で数十人と共同生活をし一生の時間軸で家族で過ごす。たとえば戸籍のうえで関係のない子どもとも生活をしている。均質な世帯を想定した現行の憲法などはこうした人に『親に言えない』といった分断を招く」

「新しい家族のかたちを実践する立場として憲法が期待する家族観には少し違和感がある。婚姻や家族について規定する24条が典型だ。家族に対するアイデンティティーの持ち方は現代はより多様になる。性的少数者(LGBT)らの婚姻や夫婦別姓などにもギャップを感じている」

――シェアリングエコノミー協会の代表理事として発信を続けています。

「シェアリングエコノミーは私有財産制(29条)を脅かすものではない。ただし日本の高齢化や地方都市での人口減のなかで、公有や私有のあり方は議論が必要になる時が来る可能性は十分にありうる。個人間取引の共有の理念を示す基本法制定を働きかけている」

 

いしやま・あんじゅ 国際基督教大卒。シェアを通じた生活様式を発信する。シェアリングエコノミー協会代表理事、Public Meets Innovation代表。神奈川県出身。