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積水ハウス、アプリで「つながる戸建て」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF12D4Q0S2A410C2000000

 

足元では新築販売の4割程度で導入が進む。居住者の急性疾患を検知するサービスも実験中で、住宅のビッグデータ活用を模索する。

 

直樹くんが解錠しました――。とある平日の午後3時ごろ。出勤中のお母さんのスマホに、小学生になったばかりの子どもの帰宅を知らせる通知が届いた。積水ハウスが新築の戸建て住宅向けに提供している「PLATFORM HOUSE touch(プラットフォームハウスタッチ)」の機能だ。家族の情報を登録したカードキーで鍵を開け閉めするとアプリに通知され、誰が帰宅したのかといったことがわかる。

家電の操作も簡単だ。特徴はアプリ上に自宅の間取り図が表示されること。それぞれの部屋に配置された照明やエアコンなどのアイコンをタップすると、離れていても電源のオンオフや温度調整ができる。セキュリティ対策のための機能もある。外出中に警戒モードをオンにすると、部屋の窓が開いた時に通知を出して知らせる。さらに火災警報器とも連動し、警報が鳴るとスマホに通知する。

全国でサービスを開始したのは2021年末。22年1月ごろから契約が出始め、足元では新築販売のうち4割ほどで導入されているという。担当の吉田裕明執行役員は「当初の想定より受け入れられている」と目を丸くする。

コネクテッドホームのサービスは既に10年代から、米グーグルなどIT(情報技術)企業が中心となり提供してきた。しかし各家電のリモコンの赤外線を利用したIoT機器が一般的で、リモコンの登録など導入のハードルが高いという課題があった。吉田執行役員も「リテラシーを求めた商品が多く、普及しにくくなっていた」と指摘する。積水ハウスは新築の引き渡し時には設定を完了させる。利用料金も、初期費用を除き月額2200円に抑えた。

積水ハウスが次に見据えるのが健康領域だ。天井に設置したセンサーで居住者の心拍呼吸数を検知するサービスの実証実験を実施している。急性疾患などで異常が生じると緊急通報センターに通知が届き、場合に応じて救急隊が出動し遠隔解錠で救出に向かう仕組みだ。他にも睡眠をテーマにしたサービスなど、IoT機器の活用アイデアは豊富だ。吉田執行役員は「家族の生活ログがどんどん蓄積され、住宅のビッグデータになる」と話す。

同じ住宅メーカーの大和ハウス工業もコネクテッドホームのサービスを仕掛ける。18年にグーグルと連携し、音声で家電を操作できるシステムを開始した。自宅に15インチほどのタッチパネル型端末を設置し、家電の操作や手書き可能なカレンダーを搭載したシステムの実証実験も行った。遠隔診療など健康管理も自宅のパネルから可能になる可能性もある。吉田博之主任研究員は「大和ハウス経済圏ができるかもしれない」と意気込む。

今後はさらなる普及が課題になる。大手住宅メーカーは顧客と常にコミュニケーションし続ける営業担当が全国に散らばっているのが強みだ。消費者の生の声を生かし、スピーディーな商品開発や改善につなげられるかが焦点だ。