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ヤマト運輸、オートロックマンションでも置き配

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0725K0X00C22A4000000

 

2022年度中に約1万棟を目指す。新型コロナウイルス禍で電子商取引(EC)による荷物が増加するなか再配達を減らし、消費者の利便性向上や宅配員の負担軽減につなげる。

 

システムは荷物の受け取り主が発送通知のメールに記されたURLをクリックして置き配を選び、オートロック解錠に同意すると、宅配員がスマートフォン専用アプリで解錠できるようになる仕組みだ。宅配員が玄関前などに置き配した荷物の写真を撮ると、受け取り主にその様子が確認できるURLも届く。

必要な手続きは事前にマンションのオートロック解錠用機器の情報とEC注文時の配達先の住所を照合し、対象のデジタルキー会社にエントランスの解錠申請をすることだ。配達情報ごとにオートロック解錠に必要なワンタイムパスワードが発行されるため、安全性が高いという。

ヤマトのEC事業向けサービス「EAZY」を導入している通販サイトでの商品購入が対象だ。スマホを鍵代わりにする技術をマンションなどに提供するライナフ(東京・文京)などデジタルキー会社6社と連携し、先行的に練馬区、豊島区、板橋区のマンション14棟で開始した。22年度中に全国約1万棟での導入を目指す。将来はデジタルキー会社10社と組み、数十万棟に拡大する方針だ。

コロナ禍による外出自粛などが続いたことで、ECサイトの荷物は増え続けている。ヤマトでは21年度の宅配便取扱個数が22億7562万個となり、過去最多を記録。20億個を初めて超えた20年度に続いて2年連続での過去最高更新となった。

こうしたなか、オートロックマンションでは1戸ずつ許可を得てから立ち入らなければならず、不在時の置き配もできない。宅配ボックスが設置されていても空きがないと再配達になり、宅配の効率化が課題となっている。住宅・不動産総合研究所によると、00年以降の新築マンションでは6割以上がオートロック付きで、東京23区では約8割にのぼる。

日本郵便や佐川急便もデジタルキー会社と連携し、事前に登録した配達員の顔写真などでオートロックを解錠する仕組みの置き配の実証実験を進めている。日本郵便はマンション内で自動走行ロボットによる配達実験も行っており、「効率化と安全性などを考慮し、より良い選択肢を模索している」(同社)と語る。

こうした置き配に関するシステム導入の課題は、入居者のセキュリティー面の不安解消があげられる。ヤマトと連携するライナフは「事前許可を得た配達員が専用アプリで解錠する仕組みは、なりすまし防止などの効果で安全面でも有用だ。住民には便利さと併せて伝え、利用拡大を進めたい」(広報)という。

多発する再配達が減れば、配達員の負担軽減だけではなく二酸化炭素(CO2)削減という社会課題解決も期待できる。