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新型コロナウイルス禍が落ち着き3年ぶりの行動制限なき大型連休を迎え、経済再開(リオープン)期待が高まる。円安を背景に海外投資家からの資金も流入しやすい。もっとも本丸のオフィスでは過剰感が残っており、コロナ禍前回復までの道のりは遠い。
「押し目待ちだったが下がる気配が乏しいので、少しずつ買っている」(九州地銀の運用担当者)。28日の東証REIT指数は1975.75と、4月に入ってほぼ横ばい圏で推移。日経平均株価が3月末比で4%下落したのに比べ下値が堅い。
国内REITは米国と比べても安定している。S&Pの米REIT指数はダウ工業30種平均の急落と歩調を合わせて4月20日比で5%下げたが、日本は1%高い水準だ。
世界的なインフレ・金融引き締めを受け、国内でも20年債など超長期金利は急ピッチで上昇している。金利上昇は本来、利回り商品としてのREITの魅力を薄める。それでもREITに資金が流入するのは「大型連休を機に人流が増え、商業施設やホテルなどの稼働回復に弾みがつく」(地銀)と期待されるからだ。
「ホテルについては持たざるリスクも意識され始めた」(岡三証券の並木幹郎シニアアナリスト)。岡三証券によると3月末時点でホテル関連REITのNAV倍率(株式のPBR=株価純資産倍率=に相当)は0.92倍と6業種中、唯一1倍を下回る。これまで厳しかったホテルの稼働が改善しREITに支払うテナント料が増えるとみるならば、割安だ。
ニッセイアセットマネジメントの大島正久チーフ・ポートフォリオ・マネジャーが注目するのは住宅だ。「これまで弱かった都心のシングルルームが底打ちしてきた」。今春は多くの大学で対面授業が再開され、企業も新卒採用や地域間異動を増やしている。
為替の円安も追い風だ。東京証券取引所によると、3月の海外勢によるREITの買越額は約640億円と1年ぶりの大きさになった。SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリストは「グローバルなファンドの運用者が買い進めている」と指摘する。円安が進むとドル建て換算でみた日本REITの保有額が減少し、運用ポートフォリオに占める割合を戻そうとするためだ。ユーロ安も進むが「欧州はウクライナ情勢もあり手を出しにくい」という。
東証REIT指数は「年後半にかけて2100程度に上昇する」(SMBC日興の鳥井氏)との声が多い。だがコロナショックで急落する前の水準(20年2月、2250程度)までは距離がある。REITの保有資産の4割(取得価格ベース)を占めるオフィスで、「2023年問題」への懸念が拭えないためだ。
不動産サービスのCBREによると来年、東京で上位の「グレードA」オフィスの新規供給は約19万坪(約62万平方メートル)になる見通し。コロナ前の10年平均(約10万坪)を大きく上回る。
経済が再開しても在宅と出社を組み合わせる「ハイブリッド勤務」は定着しそう。この課題にオフィスREITがどのような解決策を示せるのかが、長期的なREIT指数の行方も占いそうだ。

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