https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD18C6I0Y2A410C2000000
「独占業務」まず確認
「誰に依頼すればよいか?」への答えとしては、「誰に依頼するのが適しているか」と「誰に依頼しなければならないか」という2つの視点がある。後者は日本では特定の業務について、原則として特定の士業しか扱えないと法令で定められている場合があるからだ。いわゆる「独占業務」である。まず、この独占業務にあたる例から見ていこう。
「税金のことを相談するなら税理士」とすぐに思い浮かぶかもしれない。例えば、具体的な税額計算を伴う相談や、税の申告書類の作成、申告の代理などは有償無償を問わず税理士の独占業務だ。
争いごとの解決や訴訟を起こしたいといった相談の場合は弁護士の出番だ。訴訟や法律事件に関する代理、仲裁などの法律事務全般は弁護士の独占業務となる。例えば、離婚の際に相手ともめている場合、弁護士に相談し、必要に応じて家庭裁判所に調停の申し立てを依頼する。
もっとも、裁判所に提出する書類は司法書士も作成できる。例えば、養育費請求申立書や親権者変更申立書、相続放棄申述書のほか、遺産分割調停や夫婦関係調整調停(円満調停・離婚調停)といった調停の申立書などの家裁に申し立てる書類がそうだ。しかし、これらの調停や訴訟の代理人になれるのは、弁護士となるため注意したい。
ただし、簡易裁判所に提起されるもので、紛争または訴訟の目的の価額が140万円以下の場合に限っては、簡裁代理権を持つ「認定司法書士」であれば代理人になることができる。
登記に関する業務は原則として司法書士の独占業務だ。具体的には、不動産の売買や贈与の際の所有権移転登記(名義変更)、会社設立時の登記についての提出書類の作成や手続きの代理などである。身近なところでは、住宅ローンなどの借り入れに伴って設定する抵当権設定登記や返済後に行う抵当権抹消登記などもある。
不動産の登記であっても、司法書士ではなく土地家屋調査士の独占業務となるものもある。例えば、土地を分割するときなどの分筆登記だ。土地の調査や測量、書類の作成および登記手続きの代理は、土地家屋調査士が担う。
行政書士の独占業務もある。官公署(役所)に提出する書類の作成、権利義務または事実証明に関する書類の作成などについて、報酬を得て行う業務がそれにあたる。例えば、飲食店を開店する際に必要となる飲食店営業許可申請をはじめ、官公署に対する許認可等申請を依頼できるのは行政書士だ。
複数の士業ができる業務も
こうした各士業の独占業務がある一方で、複数の士業ができる業務もある。複数の士業が関わることができる業務こそ、どの士業に、どのタイミングで依頼すればよいのかイメージがつきにくいかもしれない。相続にかかわる依頼の場面を例にとってみよう。
例えば、相続開始後、遺産分割協議書の作成を依頼したいといった場合、複数の士業がその作成に関わることができるため、誰に依頼すればよいか尋ねられることが多い。こういった場合、遺産分割協議書作成の前後で、ほかに依頼することがあるかどうかを考えて依頼相手を選ぶのもひとつの手だ。
例えば、相続財産に不動産があり、相続による所有権移転登記も依頼したいのであれば、遺産分割協議書の作成から司法書士に相談すれば、司法書士のみへの依頼で完了する。あるいは、相続税の申告書作成も依頼したいのであれば、税理士に依頼するのがスムーズだ。相続人の間でもめる可能性がある場合は、弁護士への相談が適している。
得意分野や経験も確認
ここまで紹介してきた各士業の業務について、その多くは自分自身でもできる。ただ、人生で何度も経験する事柄ばかりではないため、よくわからないと迷ったらその道の専門家に相談するのがよい。同じ士業でもそれぞれ得意分野は異なるため、依頼する際には報酬だけでなく、得意分野や経験なども確認したい。
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