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上場株の相続税 支払い困難なら物納も 辻・本郷税理士法人 税理士 浅野恵理さん

相続税は原則、現金で一括納付します。ただ、質問者のように株式や不動産など現金以外の資産を相続する人は多いです。そうした資産の額が大きいと、相続税を払うための金銭を、用意できないことがあります。その際、相続税の物納を選択できる場合があります。

相続税の物納とは、相続した不動産や上場株式などの財産で、相続税を納める方法です。一定の条件を満たし、期限までに申請して許可を得れば利用できます。

株価が下落している際、上場株で物納すると、株を売却して相続税を支払うよりも有利になりやすいです。物納は、相続税の申告期限までに実際の株価が大きく下落していた場合も、被相続人が亡くなった日の株価の終値などの価格で納めることができるからです。株価が大きく上昇している際は、株を売却して支払った方が有利です。

株価が下落していなくても、含み益が多ければ物納が有利になることがあります。通常、株を売却すると利益に対し約20%課税されますが、物納はそうした課税がありません。売却と物納を比較する際は、株価の動きや株の取得価格を確認することが大事です。

メリットが多い物納ですが、利用には条件があります。生活に支障なく金銭で相続税を払える場合は基本的に利用できません。さらに、毎年分割で相続税を納付する延納でも金銭で納めることが困難な場合のみ物納を利用できます。こうした条件から、利用者は収入も現預金も少ない人などに限られます。

物納を知らない人は多いです。利用できれば、納税対策にもなります。相続税の支払いに困っている場合は、早めに検討するといいでしょう。