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〈Nextストーリー いまどきの部活(2)〉学生スポーツにDXの波 練習内容、データで提案

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60324350W2A420C2US0000/

 

東急東横線日吉駅前に広がる、慶応義塾大学日吉キャンパス(横浜市)にほど近い民家の一室が今、慶大体育会生の間で話題を集めている。

10畳足らずの部屋で、体組成や体の形状、ジャンプの高さなどを次々と測っていく。男子ラクロス部の新2年生の鈴木駿平(19)は「どこを鍛えればいいか可視化されるのがありがたい」と白い歯を見せた。

2021年12月に開設されたこの"秘密基地"には健康機器大手のタニタ(東京・板橋)や、3Dボディースキャニングシステムの最大手SYMBOL(同・千代田)などの最新鋭の計測機器がそろう。運営するのはスポーツ関連のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する事業を手掛けるネクストビジネスソリューション(同・港)だ。

慶大スポーツ医学研究センター教授らのサポートのもと、学生アスリートのサポート事業を開始。日吉を選んだのは、「継続してデータを取り、成長曲線を見せることに価値がある。慶応なら仮に幼稚舎から大学生まで計測を続ければ最大16年分の数値がそろう」。

実施事例1000以上

21年11月~22年3月にかけてNTT東日本の協力のもと、宮城県の東北福祉大と仙台大の野球部を舞台に実証実験を展開した。投球時の球速や回転数、打撃時のスイング速度や角度など、個々の選手の変化を調査・分析。3月の最終回では、「前回よりボールの縦変化が大きくなった。球速を出しながらより伸びのあるボールを投げられるようになると良いはず」といった同社アナリストのアドバイスに、新4年生は聞き入った。

「データの扱い方や自分のプレー感覚との擦り合わせは、単純に野球をやってきた人間だけだと難しい。専門家と一緒に意見を交わしながら作り上げる作業が必要だと感じた」と同社担当者の後藤貴司(33)。

指導も具体化

自身のパフォーマンスが可視化されたことで、選手の目の色も変わり始めた。東北福祉大の投手、細川拓哉(22)は「言葉でアドバイスされるより、数値で示されるほうがわかりやすい」。学生は漠然とトップ選手のフォームやトレーニングに合わせがちだが、「自身の強みを生かした練習法を考えられるようになった」と後藤は言う。