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週休3日をDXで実現 鳥取県米子市の不動産会社の挑戦

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2244H0S2A420C2000000

 

ウチダレックの一連の改革の旗振り役は3代目に当たる内田光治専務。慶応義塾大学経済学部を卒業し、同大学のビジネススクールで経営学修士(MBA)を取得した後、楽天(現楽天グループ)を皮切りに複数のIT(情報通信)企業で働いていたが、2016年にUターンして家業に入った。

いざビジネスパーソンとして家業に身を置いてみると、業務の棚卸しをしようにも、そもそも業務が見えない。従業員はお互いに干渉せず、業務が個人商店化してしまっていたからだ。「中小企業には多い話だと思うが、仕事が人にひも付いてしまっていた。それぞれが抱え込んでいる業務を明らかにして、解きほぐしていくことから始めた」と、内田専務は当時を振り返る。

営業に契約処理、アパートの入居者管理に経理と、内田専務自身がそれぞれの業務を実際にやってみることで、業務プロセスの洗い出しを進めていくと想像以上のムダが見つかった。

29工程の業務を一覧

クラウド型システムの導入によって、リモートワークが可能になったことで、子育てや介護との両立のハードルも下がり、非正規から正規への切り替えも進んだ。DXの前後と比べて、1人当たりの人件費は2割増加。改革の果実は従業員に還元されている。

改革を経て社員は半減したが、業務が効率化されたことで、不動産業界では初めてとなる週休3日も実現した。引っ越しシーズンの2、3月の繁忙期を除いて導入。週休3日になっても処遇は変わらない。厚生労働省の雇用動向調査結果によると、不動産業の退職率は20年時点で14.8パーセントだが、ウチダレックは約3パーセント。年に1人の退職者が出るかどうかという程度だ。

DXによる働き方改革が地域創生に

ウチダレック 内田光治専務

 

不動産業の離職率が高いのはなぜか。営業活動が大変だからではないかといったことも言われますが、社員に聞いてみると、みんな営業活動は楽しいと言います。問題は営業活動の結果、契約が取れてから。1時間半をかけて契約書類を作成する。そういった膨大な紙の作業が負担になっているんです。
以前は当社でも2、3月の繁忙期には退社は午前様というありさまでしたが、DXの結果、残業は基本的にゼロになりました。DXに向けて業務フローを見直す過程で、不動産業の常識も疑いました。
例えば、店頭に張り出す紙の物件情報。都会ならまだしも、車社会で人通りのない地方都市では、効果があるとは思えません。廃止して、代わりにホームページに掲載する物件情報をより充実させました。
内見への同行も取りやめて、お客様にタクシーを手配する方法に改めました。2~3件の内見に同行すれば、1時間以上かかります。その時間を営業活動に充てようと考えました。
学生は地元企業が提供する働き方に強い関心を寄せています。それを実感したのは、2020年夏にマイナビが中国地方で開いた就職イベントに参加した際のことです。多くの大企業も集まるイベントにもかかわらず、私の講演に当日来場していた学生のうち約半数が集まってくれたんです。
多くの若者が生まれ育った地元で働きたいと願っていながら、希望を持てずに都会に出ていく。地元を離れられない事情がある場合には、「安全策」として仕方なく役所や金融機関に就職する──。
DXや週休3日がここまで注目を集めるのかと私自身も驚きましたが、地元企業がもっと魅力的な職場であってくれればというのが、若者の切なる願いなのでしょう。DXを通じた働き方改革は地域の創生にもつながっていくと確信しています。(談)