https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1587R0V10C22A4000000
都市部に住む女性の経済的自立が進み、結婚に必要を感じなくなっているのが大きな理由だ。少子高齢化や人口減につながりかねないだけに習近平(シー・ジンピン)指導部も危機感を強め、共産党の機関紙が異例の"介入"に動く事態となっている。
結婚組数は統計でさかのぼれる1986年以降で最も少なくなった。過去最低を更新するのは2年連続。
中国ではすでに若い女性らの間で結婚の失敗を恐れる「恐婚族」という言葉が定着している。対照的に農村や地方に住む男性は結婚して妻に家業を手伝わせたり、子供に後を継がせたりする願望が強い。このギャップは広がるばかりだ。
中国では結婚や出産、育児を巡る夫婦間の葛藤を描いたテレビドラマ「親愛なる子ども」がいま論争を呼んでいる。仲むつまじかった若い夫婦が出産を機に関係が暗転、両親の家庭への関与や育児の負担、子どもの病気の治療を巡り言い争う場面がこれでもかと描かれている。
こんなドラマを見せては若者を結婚からますます遠ざけてしまうと心配したのだろう。中国共産党の機関紙、人民日報電子版は4月11日に「不安を売る作品は程ほどにせよ」とする評論記事を流した。「家庭内の衝突や矛盾をこれほど多く描くのは適切ではないとの意見がある」とも指摘。中国のドラマはすべて放映前に共産党宣伝部の厳しい検閲を経ている。放送開始後に介入するのは異例だ。
ところが事態はこれだけにとどまらなかった。人民日報の評論を読んだネット民が「こんなのはふつうの光景にすぎない」「現実はもっと悲惨だ」と猛反発。かえって火に油を注ぐ騒ぎになっている。
結婚組数の減少は将来の出産や人口減にも直接響いてくるが、政府の力で押し上げるのは容易ではない。そこで習近平指導部は結婚を増やすのではなく離婚を防ぐ「奇策」に乗り出した。
離婚手続きの申請後、30日以内は「冷静になるための期間」として取り下げられるようにして、衝動的な離婚を防ぐようにした。30日後に夫婦双方が離婚証明の発給を申し出ない場合も離婚手続きの申請を取り下げたとみなすことにした。このルールは21年に始まり、同年の離婚組数は213万件と前年比でほぼ半減した。
ひとまず効果はあったようだが、共産党が最も懸念する出生数の減少には歯止めがかからない。21年の出生数は前年比138万人減の1062万人だった。5年連続の減少で、1949年の建国以来の最少となったとみられる。
政府は昨年、全ての夫婦に3人目の出産を認めたが、結婚さえ望まない若者が増えている状況では「焼け石に水」。中国の一切を指導する共産党も若者の結婚観の変化には手が及ばないようだ。
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