https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB155W30V10C22A4000000
すでに欧米の主要各国では程度の差はあれ同等の景気のゆがみが発生しており、今後も事態の加速と長期化が懸念されている。その中でも特に深刻な状況にあるのが欧州だ。
欧州はウクライナ・ロシア問題の影響を直接的に受けたため、他国に比して経済へのダメージが大きいように見える。そもそも地政学リスクが顕在化する前の2021年後半の時点で、資源高による物価の高騰と、一向に収まる気配のないコロナ禍による消費の減速で、経済の失速懸念が出始めていた。そこにウクライナ・ロシア問題による原油や天然ガスなどの資源価格の高騰が加わり、ダメ押し的にインフレが急加速してしまった。
ドイツにマイナス成長懸念
例えばドイツの3月の消費者物価指数(CPI)は、前年比で7.3%上昇と、1992年以来最大の伸びを記録した。ちなみに、欧州連合(EU)基準の計測では7.6%上昇となり、約40年ぶりの数字となる。
これを受けてドイツ政府の助言機関である経済諮問委員会は、ドイツ経済がマイナス成長に落ち込み、リセッションに陥るリスクが相当に高まっているとの声明を出している。実際に同委員会では21年末時点のドイツの国内総生産(GDP)成長率について4.6%の伸びを見込むとしていたが、足元では1.8%に減速するとしている。この短期間に3%近くもの成長期待が消し飛んだことになる。物価高騰を続け、成長が減速するのだから、典型的なスタグフレーションの兆候である。
アジアの大国である中国も極めて厳しい状況に置かれている。3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.1と急速に悪化し、20年3月のコロナ禍初期以来の最低値を記録した。サービス業PMIも42.0と大幅に低下し、製造業、サービス業ともに景気後退の節目となる50を下回ることとなった。
その一方で購買価格と工場出荷価格は5か月ぶりの高水準となり、こちらもドイツと同様に経済の減速とインフレがセットで押し寄せる事態となっている。中国に関しては、資源価格の高騰に加え、不動産の債務問題などの独自の問題や、コロナ禍の急拡大に伴う主要都市の封鎖(ロックダウン)の影響が大きく、感染者数が増加を続けている現状を考えると、事態はより深刻かもしれない。
相互依存の貿易関係
両国は過去から経済的なつながりが強いことで知られ、ドイツの歴代首相も世界の米国一強にあらがうがごとく、対中経済政策を重要視してきた経緯がある。
事実として20年のドイツにおける国別の輸出入の合計額は、中国がオランダに次いで第2位となっている。隣国オランダはEU域内で地理的にも経済的にも近い存在であることから、中国がドイツの実質的な最大の貿易相手国と見ていいだろう。
またドイツの基幹産業である自動車で最大手のフォルクスワーゲンの21年の国別販売台数を見ると、中国一国のみで全体の4割近くを占めている。
株式投資の観点からは、この2つの大国の連鎖崩壊のリスクに備え、海外売上高比率の高い製造業などは避け、ディフェンシブ性の高いサービスや食料品などへシフトしておくことが望ましいだろう。あくまで最悪のシナリオではあるが、その足音がどんどん大きくなっている気がしてならない。
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