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(社説)公平で透明な相続課税制度に

このような節税策が認められるかどうかが争われた訴訟で、最高裁が「税負担の公平に反する場合は認められない」とする判決を出した。

相続に広く影響する判決として関心が集まり、裁判所が節税の範囲と公平性のバランスをどうとるかが焦点だった。行きすぎは容認しないとの結論は妥当だろう。

相続税の算定には通常、国税庁が公表する路線価が使われる。ただ公表は年に一度だけで、実勢価格が一気に上がる場合などは実態から大きく乖離(かいり)しやすい。問題となった不動産も、購入価格が約13億円だったのに対し、路線価に基づく評価額は約3億円だった。借り入れも加味した申告納税額は「0円」だった。

国税側はこれが過度な節税に当たるとみて、資産価値を国税が独自に再鑑定できる例外規定を使って追徴課税した。「伝家の宝刀」とも呼ばれる手法で、裁判ではその是非が問われた。

最高裁は、今回の事例は相続財産の価値を圧縮しすぎており、見過ごせない不公平だと判断した。注目したいのは、勝訴した国税側にも、特定の人を狙い撃ちして例外規定を使うのは「合理的理由がない限り平等原則に反する」と念押しした点だ。納税者と国税の双方にくぎを刺したといえる。

この規定は、路線価などによる算定が「著しく不適当と認められる」場合が対象だが、もともと適用基準が曖昧との批判が根強かった。原告側も「恣意的な課税だ」と訴えていた。国税側にも、よりわかりやすい運用を求めたい。

路線価が実態とずれている点も混乱の一因だ。正確に資産価値を測るため、路線価以外の新たな物差しを考える必要もあろう。

公平で明快な課税は国の根幹である。最高裁の指摘を踏まえ、国税当局は、納税者にとって透明性の高い相続課税の仕組みづくりを進めるべきだ。